第二部 1978年
ソ連の長い手
崩れ落ちる赤色宮殿
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声が上がる。
「同志長官……」
右の食指を、ドアに向かって指し示す。
「ソビエト2億の民の運命は、君達の双肩にかかっているのだ!
赤旗を高く掲げる前衛党の為、勇ましく死んで来い」
居並ぶ男達は、老人に対して挙手の礼をする。そして力強く叫んだ。
「万国の労働者の祖国、ソビエト連邦に栄光あれ!」
再び色眼鏡を掛けると右手を上げ、挙手で応じる。
不敵の笑みを浮かべるながら、彼等を見送った。
「既に勝負はついたような物よ……、然しもの木原もゼオライマー単機のみでは第43機甲師団の砲火より抜け出せまい」
奥に座るソ連邦最高評議会議長の方を振り返る。
「GRUの馬鹿者共と木原が共倒れすれば、残すは東独の反逆者のみよ」
一頻り哄笑する。
そこに伝令が息を切らして、駆け込んできた。
「どうしたのだ!」
焦慮に駆られた議長は伝令に問い質した。
喉も破れんばかりの声でこう告げたのだ。
「た、大変で御座います、同志議長。第43機甲師団との連絡が途絶いたしました」
「何、43機甲師団もか。何と言う事だ」
隣にいるKGB長官の顔から先程迄の上辺だけの笑みは消えて、額に深い皴を刻み込んでいた。
「おのれ、木原マサキ、ゼオライマーめ……」
拳を握りしめ、身を震わせる。ただ眼だけが窓に向けられる。
窓からは7月のシベリアの涼しい風が吹き込んで来るばかりであった……
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