第二部 1978年
ソ連の長い手
崩れ落ちる赤色宮殿
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事を仰りますな」
彼はそう告げると、不敵の笑みを浮かべた。
一瞬、男の顔色が曇る。
「この話をソ連は……」
「公式、非公式にも伝達して居りません」
両切りタバコを二本立て続けに吹かした後、押し黙る彼等の方を振り向く。
「中ソ国境、中蒙国境で近々大規模演習を行う予定が御座います」
暗にソ連侵攻を匂わせる発言をする。
「7年間の抗日戦争(支那事変)を上回る、このBETA戦争の惨禍から復興……。
日本の力無くして為し得ません。故に我等は過去を一切水に流すつもりでおります。
その事を皇帝陛下並びに殿下(将軍)に宜しくお伝えいただきたい」
男の言葉を最後まで聞いた後、大使はおもむろに立ち上がる。
「分かりました」
そう言って室内を後にした。
一部始終を聞いていた鎧衣は、困惑していた。
思えば、木原マサキと言う得体の知れない男が現れてから、全てが変わった。
何百億ドルも費用をかけて実施した国連のオルタネイティヴ計画……。
ソ連が熱心に推進していたオルタネイティヴ3計画は、いともたやすく捨てられた。
数百人いたとされるESP発現体も研究施設も核爆発の下、全て消滅。
「あの木原マサキと言う男がオルタネイティヴ計画の中止に関わっているのだとしたら……」
男は慌てて打ち消した。
第一、そんな想像は自国の諜報組織や科学者たちに対する侮辱だ。冒涜だ。
日夜秘密工作に従事する諜報員たちが役立たずであるという事ではないか。
とても理屈に合わないように思えた。
12世紀末、世界史上に突如現れた蒙古王、成吉思汗。
短期間に勢力拡大を成し、蒙古平原の奥底より全世界に打って出た。
それに伴い、ユーラシア全土をくまなく掠奪した事は、つとに有名であろう。
そのタルタル人の惨禍を思わせる様なBETAという異星からの化け物。
その群れから運よく逃れている、この地・シベリア。
何れは、ジンギスカンの時の様に、ロシアは焼け落ちよう……
ソ連指導部はそんな懸念から米国政府との間にアラスカ売却計画を交渉していた。
その矢先に現れた無敵の超大型兵器・天のゼオライマー。
天才科学者・木原マサキ。
彼等が、喉から手が出るほど欲しがったのも、無理からぬ話であろう。
「ゼオライマーさえ、ソ連の物になれば……、ハイヴは疎か米国まで我等の物よ」
高らかに笑い声をあげるKGB長官。
「手強い男よ……、木原マサキ」
薄い水色のレンズをした銀縁の眼鏡を取ると、周囲の人間を見回す。
「すでに2度、KGB特殊部隊を派遣したがすべて水泡に帰した。
君達がしくじれば、ハバロフスクを核で焼き払わねばなるまい」
どこからか、
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