第三十話 部活をしてその三
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「赤穂は忠臣蔵とお塩よ」
「そうなるのね」
「忠臣蔵はまあ色々言われてるけれど」
「まず江戸城で刀抜いた殿様が切腹になって」
江戸城では鯉口三寸抜けばそれで切腹となっていた、その為浅野内匠頭の切腹は避けられなかったのだ。
「それで江戸市中でもよね」
「刀抜いてね」
「人殺したのよね」
「そうしたお話よ」
「何か物騒なお話ね」
一華は冷めた目で述べた。
「こうして考えたら」
「そうした見方も出来るわね」
「集団暴行殺人に見えるわ」
「お母さんも否定しないわ」
娘のその見方はというのだ。
「最初に切れたお殿様が馬鹿なことしてはじまって」
「逆ギレした人達が四十七人で徒党を組んでね」
「お年寄りの家を襲ってよ」
そうしてというのだ。
「殺したのよ」
「そうしたとんでもないお話ね」
「かなり皮肉に冷たく見るとね」
「そうよね」
「それで全員切腹になったのよ」
四十七人のうち四十六人がそうなった、尚幕府の中で除名単眼の声も強かった。
「江戸市中で刀抜いてしかも人殺してるから」
「当然の結果ね」
一華は冷めた声で述べた。
「忠臣蔵って」
「内匠頭さんもね」
騒動の発端である彼もというのだ。
「刀抜いたら終わりよ」
「それだけでね」
「けれど幕府は批判されたのよ」
当時からだ、実は仮名手本忠臣蔵歌舞伎や浄瑠璃で有名なこの作品は堂々と幕政を批判してもいるのだ。
「殿様即座に切腹になったからね」
「当然でしょ、刀抜いて人傷付けたんだから」
「けれどその日のうちにお外で切腹になったから」
「それの何処が悪いのよ」
一華は母に冷めた目で問うた。
「刀に抜いたら終わりってお母さんも今言ったでしょ」
「その日のうちにお外でっていうのがよ」
「駄目だったの」
「日を置いてお部屋の中でなのが大名の切腹だったの」
「そうだったの」
「けれど当時の将軍様が怒って」
犬公方と呼ばれた徳川綱吉だ、尚悪名高き生類憐みの令は実は江戸とその近辺にしか施行されておらず実害は日本全体で見ると殆どなかった。
「そうさせたのよ」
「将軍様も江戸城で刀抜いて怒ったのね」
「お母さんが官位貰う式で朝廷の人達も来ていたのに」
「幕府の面子潰れたのね」
「それで潰されて」
実際にというのだ。
「本気で怒ってね」
「将軍様の何処が悪いのか」
「けれど大名の切腹はそうしたしきたりだったから」
「そこを言われたの」
「そうだったのよ」
「いや、どう見ても刀抜いた方が駄目でしょ」
一華はそれはと言った。
「やっぱり」
「そう思うのが今でね」
「今はなの」
「昔は違ったのよ」
「そうなの」
「それで主君の仇討ち、忠義でね」
正に武士の倫理に基づいてというのだ。
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