第二十六話 待ち受ける者
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るか、功績を立てるか、争いにならない方がおかしい。二つの司令部の仲の悪さは今では伝統であり伝説の様なものだ。
「場合によっては方面軍司令部の命令を軽視、或いは無視しようとする危険性も有りますな」
「そうですね。グライフス、メルカッツ両大将を無視しかねない。それを防いで欲しいのです」
「……」
先程までの苦笑はもう無い、公は厳しい表情をしている。
「装甲擲弾兵第二十一師団は方面軍司令部の直属部隊となります。要塞司令部、駐留艦隊司令部の参謀達、或いはその将兵が馬鹿な真似をした時は……」
「我々がその心得違いを窘めるという事ですか」
「ええ、手厳しく、二度と心得違いをしないように」
「なるほど」
要するに番犬役、あるいは用心棒役か……、いや監視役でもあるな。独自の軍事力を持たない方面軍司令部にとって装甲擲弾兵第二十一師団は唯一の武器という事になる。常に両司令部に圧力をかけ“協力を忘れるな”、と警告を発し続けるという事か……。コーヒーを一口飲んだ。釣られた様に公もココアに口をつける。
「それだけ、ですかな」
「……分かりますか」
「甘く見てもらっては困りますな」
半ば自分の読みが当たった事を喜びつつ出来るだけ平静な口調で言った。苦笑を浮かべる公に何となく満足感を覚える。そうだろう、そうでなくてはおかしい。それだけなら俺でなくとも良い筈だ、敢えて俺を此処に呼びつけるまでも無い……。
「自由惑星同盟軍は追い詰められています」
「そうですな」
確かに同盟軍は追い詰められている。ここ近年敗戦続きだ。特に前回の戦い、倍以上の兵力を用意しながら公の前に敗れた。焦燥に囚われているだろう。
「一気に挽回しようとイゼルローン要塞攻略を考える可能性が有ります」
「……」
「厄介なのはフェザーンが同盟に協力的な事です。同盟の軍事行動を故意に帝国に知らせない可能性が有る」
「なるほど、組織改正はそのためということですな」
公が頷いた。そして口を開く。
「同盟軍が正攻法で攻めてくるなら防げるだけの手は打ちました。協力さえ出来れば多少の兵力差は問題になりません。問題は同盟軍が奇策を使ってきた時でしょう」
「奇策、ですか」
「そう。味方の振りをして要塞を外からではなく内から攻める……」
「……内から……」
「潜入には帝国語が堪能な、そして勇敢な人間が選ばれるでしょうね。そして出来る事なら失われても惜しくない人間が……」
公が俺をじっと見ている。なるほど、そういう事か……。
「装甲擲弾兵第二十一師団をイゼルローン要塞に配備することは辞令には出しません。相手に知られたくない」
「……待ち伏せという事ですな、了解しました。期間はどれほどですか」
「長くても二年……、そう考えています」
二年か……。長く
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