第73話 派閥と家族
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な知ってくれると思いますが」
「そして俺は故アントン=ボロディン中将の息子で、グレゴリー=ボロディン少将の養子で、現役の少佐だ」
「ええ、そうです」
「俺の経験から言わせてもらえれば、将官の子息子女だからと言って何かと配慮されてると勘違いする奴が、先輩同期に関わらず士官学校にはいっぱいいる」
俺の場合、それが原因でウィレム坊やに目を付けられた。幸い同じ家庭環境にある気のいいウィッティが同室で、校長がシトレだったから実に風通しのいい士官学校生活を送れた。そういう意味では運が良かったのかもしれないが……
「ムカつく奴は何処の社会にもいる。理不尽な命令はいくらでもある」
「……」
「前に話したよな。どんな理不尽な命令にも『軍紀に則している限り』従わなければならないと」
「はい」
「じゃあ、後は簡単な話だ。『同盟軍士官学校校則』と『同盟軍基本法』と……『同盟憲章』を勉強しておけばいい。フレデリカ=グリーンヒルは記憶力がいいって話を聞いている。彼女も今のお前同様、バリバリに猫を被っているだろうから二人でじっくり話し合って、これからの士官学校での生活について、自分で考えてみろ」
「……はい」
「今度は平手打ちなしだぞ。分かってるな?」
「わかってます」
本当に俺の言いたいことが分かっているかは分からない。だが先程よりは頬の筋肉が緩み、フォークの動きも滑らかになっている。性格はかなり違うが、同性の幼馴染で精神的には大人な彼女の存在は、アントニナの精神にとってはプラスに十分働くはずだ。
「兄さん」
「なんだ」
少し落ち着いたアントニナが、午餐会を終えて分かれる寸前、ベレーを直しながら俺に問うた。顔は先程よりはずいぶんまともになったが、目は全然笑っていない。
「宇宙港にいた赤毛の女はいったい誰?」
「……は?」
一瞬、ドミニクの顔が頭に思い浮かんだが、アントニナが宇宙港で会ったという赤毛の女は一人しかいない。だがその身の上をこの場で明らかにすることはどうにも気が引けた。チラッとグレゴリー叔父の顔を見ると、渋い顔をしている。レーナ叔母さんは何とも言えない顔をしているし、イロナはジッと、ラリサは興味津々でこちらを見ている。
「……ここでは秘密だ。たぶん、来年、わかると思う」
「来年!?」
アントニナの両手がスーツの両上襟に伸び、俺の上半身をグラグラと力強く揺らす。その行動に周囲の目が一気に俺達に集中する。
「どういう事! 聞いてない!」
「だってそりゃあ、触れ回るような話じゃないし……」
「兄ちゃんのバカ! 知らない!」
アントニナの両腕がグンと伸ばされ、俺は盛大に後ろに転げると、アントニナはいかり肩でズンズンと力強い足取りで食堂出口へと去っていく。途中でフレデリカらしき女性士官候補生がア
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