第73話 派閥と家族
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わけではない。
派閥の影響力拡張の為に、そして出世の為に出征の積極性は高まる。本来それを押さえつけるべき政治家側の軍政派も、その指導者が主戦論者である以上、より軍事活動は活発になるだろう。そして軍政派には実戦両派にはない軍需産業からの手厚い支援がある。何しろ指導者が軍人ではなく政治家だ。
実戦両派にも友好的な政治家は当然いるが、シトレの『朝寝坊な幼馴染』のようなタイプが多い。清廉で調整能力があり、且つ実務に優れた政治家だが、天性の扇動利権政治家を相手にするには分が悪い。政治家の権力基盤はあくまでも国民であり、選挙の票だ。軍関係の政治家ということで極力清廉に努めようという志は好ましいものだが、人の心に撃ち込まれる『模擬弾』と財布に撃ち込まれる『実弾』を前には、残念ながら大きな力とはなりえない。
グレゴリー叔父ももう知っていることだろうが、俺が第四四高速機動集団の次席幕僚になるまで時間がかかったのは、キャゼルヌの証言を待つまでもなくトリューニヒトが原因だ。ここまで叔父の口から奴の名前は出ていないからこそ、叔父は俺に言いたいのだろう。
「近いうちに次席幕僚として、第八艦隊にお礼を言いに行かないといけません。なにしろエル=ファシル星系奪還作戦で、第八艦隊には補給の面で随分とお世話になりましたので」
もう既に爺様が直接何らかの形でお礼を言っているとは思うが、フェザーン以来の一つのけじめということで俺があの腹黒い親父に会いに行くのは、軍人として間違った行動ではない。それがどういう意味ととるかは、見る人の目次第だ。
俺の言葉に、グレゴリー叔父のやや太めの右眉が小さく動いた後、ほんの僅か唇をウィスキーで湿らせ、珍しく人の悪そうな笑顔を見せて言った。
「真っ白いペンキを詰めた家屋破壊弾はいるかい? 私の分も含めて二発位なら、きっと彼も許してくれると思うんだ」
「それよりも漂白剤の入ったウィスキーがいいと思います。叔父さん、どこか売ってるところご存じないですか?」
血の気の荒さはボロディン家の遺伝子といってたのは、確かフレデリカ嬢の父親だったか。俺は幼少期における家庭環境だろうと応えたつもりだったが、グレゴリー叔父とアントニナを見てるとそうとも言えないんじゃないかなと思い始めていた。
◆
翌日。同盟軍士官学校入校式。
既にアントニナら一年生は六日前には入校しており、今日の入校式の準備だけでなく軍人としての一歩を踏み出しているわけだが、あのアントニナのことだから早々に上級生とぶつかったのではないかと不安ばかりが募る。自分は見られる側だったが、父兄側としての見る側の参加は初めてだ。
眼下にキッチリと席を並べて座る士官候補生たちと、壇上で弁を振るう士官学校校長と来賓たち。周囲に座る父兄の表情は百人
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