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剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第五話 赦し
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をしようとすれば諫められ、伝えられるものを確認しようとすれば止められる。そして最後は必ず『陛下は王座にいてください』と……」
「……」
「……わたくしは王になったのか、それとも王という人形になったのか」

 くすくすと笑っていた顔は次第に静まり、やがて人形のような無表情になる。
 そんなアンリエッタに、士郎は何も言わない。
 
「王となったのは、議論だけで決断をしない貴族たちが余りにも情けなく、頼りなかったからです」
「……」
「……ですが、今は王となったわたくしが、情けなく、頼りない存在になったのですね」

 じわりと泣き笑いが浮かぶ顔で、士郎に笑いかけると、士郎から顔を背けながらベッドから起き上がった。手を一つ持ち上げると、アンリエッタはゆっくりと目頭を抑える。

「……わたくしは……何のために女王になったのでしょうか?」

 今にも消えそうな声を漏らしたアンリエッタだが、バッと勢い良く士郎に振り向くと、恥ずかしげに士郎に声をかけた。

「すみません。愚痴ばかり言ってしまって。不快な思いをさせ――」

 謝ろうとするアンリエッタだが、頭を優しく撫でる感触に口を閉ざした。

「構わない」
「……」

 戸惑うような表情を浮かべるアンリエッタに、士郎は安心させるような笑みを向ける。
 
「愚痴や弱音をはく相手がいないなら、好きなだけぶつければいい。俺は気にしない」
「そ、そういうわけには、女王であるわたくしが、人前で愚痴や弱音をはくなど……」

 縋るような目を向けながらも、アンリエッタは否定するように顔を振る。ふるふると振るわれる頭から手を離さず、士郎はなおも続ける。

「俺はまあ、権威や権力に無頓着というか何というか……特別な地位にいるからといって、特に気にすることがない。王だ貴族だといわれても、正直言って興味などないし、ああそうなのかと頷く程度だ」
「え? あの? それって、どういう?」

 士郎が何を言いたいのか理解出来ず、ますます戸惑う様子を見せるアンリエッタに、士郎は照れ隠しのように残ったもう一方の手で頭をかくと、頭を撫でていた手を頬にずらし、微かに残っていた涙の跡を指先で拭った。

「あっ」
「その、つまり、だな。気を悪くしたら謝るが、俺にとってお前は、無理な我慢をする一人の女の子でしかない」
「……え」
「だから、女王だと我慢されても俺は納得がいかない」
「……」

 呆けたようにポカンと口を開けるアンリエッタの様子に、士郎は思わず顔を逸らしてしまう。 

「あ〜」
「……」
「すまない。やっぱり気を悪くしたか」
「……」
「すまない、姫さ――」
「アンです」
「え?」

 士郎の謝罪を遮るように、突然声を上げたアンリエッタに、今度は士郎が
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