第五章 トリスタニアの休日
第五話 赦し
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れまた投影したシーツや椅子を並べた結果。
「……凄いですね。あの部屋をここまで綺麗にするなんて」
「納得はいっていないがな」
何とか『魅惑の妖精』亭の屋根裏部屋レベルまで引き上げた士郎にアンリエッタが、賞賛の目を向ける。首を振ってまだまだと応える士郎を、可笑しそうに笑い、真新しいシーツが掛けられたベッドに腰掛けると、自分の隣りを手で叩く。
「どうぞ」
「それでは失礼して」
アンリエッタの隣に腰掛ける。アンリエッタは『魅惑の妖精』亭の屋根裏部屋でそうしたように、物珍しそうに辺りを見渡している。
日が落ちると合わせるように、部屋の中が暗くなっていく。明かりをつけようと、士郎は部屋の掃除中に見つけ出したランプに火を灯した。
ランプ内の小さな明かりが、淡く辺りを照らし出す。士郎がランプを置き、振り返ると、こちらを見つめるアンリエッタと視線が交わる。
アンリエッタは輝いていた。
日の光でもなく、月の光でもない、しかし、自然で柔らかな火の光に照らされて。
怪しく、幻想的に、それでいて生々しくアンリエッタを照らし出している。
美しく儚げな姿に、思わずそこにいるのを確かめたくなるが、手を握りしめて耐え、ごまかすように、話しかけた。
「ルイズの集めた情報は役にたっているか?」
「……ええ、とても役に立っていますわ」
アンリエッタは顎を引き頷く。
「わたくしが欲しい情報を、ルイズは常に送ってくれます。わたくしの政策への声は、好意か悪意かはわかりませんが、誰かの手が必ず加えられますから……ですのでルイズが集めてくれる誰の手も加えられていない情報は貴重ですので」
ベッドに倒れ込み、アンリエッタの身体がベッドを軋ませる。あちらこちらに染みどころかキノコが生えている天井を仰ぎ見ながら、アンリエッタは話しを続ける。
「わかってはいたんです……」
「……」
「聖女だと言われようとも……どれだけ賞賛され、敬われても、それは目の前の驚異が去るまでの間だけだと……案の定、現状のわたくしの評価は、手厳しくなっているようですね」
アンリエッタは薄い笑みを浮かべる。
「しかし、それも仕方のないことだとは思います。今までわたくしは、政治について特別な教育を受けてはいませんでした。もちろん王になってからは少しでも力になれるよう、多くの努力はしてきました。幸い王が不在の間、ずっと支えていてくださっていたマザリーニがいましたので、色々と教わりながら手や口を出し始めたのですが……」
こてんと首を倒し、アンリエッタは横に座る士郎を見上げる。
「シロウさん、どうやらわたくしはいらないみたいなんです」
士郎を見上げるアンリエッタは、可笑しそうにくすくすと笑っていた。
「何か
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