第五章 トリスタニアの休日
第五話 赦し
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たちからアンリエッタを隠すように身体を移動させた。
「わかった。近くに俺とルイズが暮らしている場所がある。幸い今は誰もいないからな。まずはそこに行こう」
「高級品ではないが、味はなかなかなものだぞ」
小さなベッドの上に座り、珍しそうに顔をキョロキョロと部屋を見渡しているアンリエッタに、士郎は手に持ったカップを手渡した。
「ありがとうございます」
礼を言いながらカップを受け取り、カップに口を付けたアンリエッタは、目を大きく見開いた。
「っ! 美味しい」
「それはよかった」
思わずと口から漏れた言葉に、士郎は目を細め小さく笑い。アンリエッタは恥ずかしげに目を伏せ、飲み干したカップを士郎に手渡した。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまです」
受け取ったカップを部屋の隅に置くと、椅子替わりの木箱をアンリエッタの前に置き、士郎はその上に座った。木箱とベッドの高さは同じ程度であるため、座っても士郎はアンリエッタを見下ろす形となっている。
アンリエッタは視線を落とし、両手を絡み合わせるようにして何かを考えているようだ。
暫らくアンリエッタが話し出すのを待っていた士郎だが、一向に口を開かない様子に、自分から口を開いた。
「で、一体何があったんだ?」
「えっ? あ、それは、近くまで来る予定があったので、ルイズに会おうと思って抜け出したんですが……思ったより騒ぎになってしまったようですね」
「当たり前だ。少し前に誘拐騒ぎがあったんだからな」
「それは、わかっているのですが……」
叱りつけるような士郎の言葉に、アンリエッタは悲しげに顔を落とす。
「もうそろそろルイズも戻ってくるはずだ、汚いところだが、それまでここで待っていてくれ」
そう言って、士郎が木箱から腰を浮かそうとすると、ベッドから手を伸ばしたアンリエッタがそれを引き止めた。
「ま、待って下さい」
「ん? お茶のお代わりを持ってくるだけだが?」
「あ、そうなんですか」
パッと手を開き、アンリエッタが外套から手を離すと、士郎は背を向けドアに向かって歩き出す。離した手を不思議そうに見下ろしていたアンリエッタだが、何かを思い出したように、ハッと顔を上げると、士郎を呼び止めた。
「ち、違う! そうじゃありません! 待って下さいっ!」
「何だ?」
ドアノブに手を掛けたまま、士郎は首だけをアンリエッタに向ける。
「ルイズに会いに来たのは、ルイズにお願いがあったからです」
「お願い? なら、なおさらルイズが必要じゃないのか?」
首を傾げる士郎に、アンリエッタは真っ直ぐに視線を向ける。
「必要なのはあなたです。エミヤシロウ……あなたのお力をお借りに
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