第五章 トリスタニアの休日
第五話 赦し
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「あ、ああわかった」
否と言える訳もなく、士郎はスカロンの言葉に頷いた。
「さて、後はこの食料を店に持って帰れば終了なんだが……ちょっと買いすぎたか?」
両手で抱えるようにして持った大量の食料品を抱え直すと、士郎は苦笑いしながら店に戻るため歩き始めた。近道をしようと、表通りから離れた裏通りを歩く。暫く時間がたち、もうすぐ店の前というところで、裏通りから士郎が出ようとした瞬間、タイミングを図ったように横から人影が飛び出してきた。
「きゃっ」
「おっと」
荷物で両手と視界を塞がれていたが、士郎は横から飛び出してくる者には事前に気がついていた。だから士郎は、ぶつからないよう、タイミングをずらして裏通りから出ようとしたが、その者が何かに足を取られたのか、小さく悲鳴を上げて転げそうになるのを視界の端にとらえたため、受け止めようと裏道から出たのだ。
「大丈夫か?」
「え? あ、あれ? な、なんでしょうこれは?」
地面に転がる直前、不意に現れた暖かな壁に顔を突っ込みだ彼女は、自分を支えた壁を確かめるように、自分を支えるものをぺたぺたとなで始めた。顔を隠すようにフードを深く被っていることから、前がよく見えないのだろう。ペタペタと動く手が上に上がっていくと、手はついに士郎の顔まで伸びていった。真っ白な、まさに白魚のような指先が唇に触れるのを感じると、流石に困ったような声を士郎は上げた。
「あ〜すまないが、そろそろ手を放してくれないか?」
「きゃっ?! え? だっ、誰ですか?」
両手が塞がっていたことから、胸で転けそうになっていた少女を支えた士郎は、ペタペタと触れてくる少女に、戸惑った声をかけると、驚いて飛び離れた少女に笑みを向けた。
「さて、どうしてこんなところにいるのか、理由を聞いてもいいか?」
「え? あっ……シロウさん? ……どうしてここに?」
「ただの偶然なんだが。あなたこそ何故こんなところに?」
「そ、それは……」
フードの奥に見えた顔は、この国の王である、アンリエッタ・ド・トリステインご本人であった。
呆れるような士郎の声に、未だ状況が把握できないのか、戸惑った様子を見せるアンリエッタ。
アンリエッタが何か言おうと口を開こうとしたが、
「ここにはいないっ! もっと捜索範囲を広げろ! まだ遠くには行っていないはずだ!」
近くから兵士たちの怒声が聞こえ、口を閉ざした。
騒ぐ兵士に顔を向ける士郎の顔に、つま先立ちして顔を近づけたアンリエッタが、士郎の耳元で囁く。
「ここでは……どこか隠れられる場所はありませんか。事情はそこで……」
フードの奥から強い視線を向けてくるアンリエッタに、小さく頷いてみせた士郎は、兵士
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