第五章 トリスタニアの休日
第五話 赦し
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してよね……ほら……水はここにたっぷり……ね……シロウ……」
「シロウは、やっぱり……胸が大きい方がいいの? ちっちゃい胸じゃ……だめ? ち、ちっちゃな胸でも……で、できることがあるのよ……」
「う〜〜っ! 失敗した! あっんのオヤジっ! ベタベタな手で触ってくるなんて! う〜……気持ち悪い! ……だ、だからね、シロウ……気持ち悪いのを上書きして……わたしの……全部に触れて……」
周囲への警戒を怠ってはいなかった。
見られたということはない筈だ。
だから、原因は他にあるのだろう。
可能性としては二つ。
匂いか声か。
換気したとはいえ、一晩では完全に抜けきれなかったのか、鼻が麻痺した自分のではわからなかった。
ドアや壁があるとはいえ、口や手で押さえていたとはいえ、不意な声は漏れてしまっていたかもしれない。
……流石に……倉庫や客席、廊下では自重しておけばよかったか……いや、我慢しようとしたんだが……最近俺こればっかりだな……。
ということは、これはやはり自業自得ということか。
目の前に迫る怪物から目を逸らすことなく、士郎はゴクリと喉を鳴らす。
怪物は、そのグローブのような手をこちらに向かって伸ばすと、肩を鷲掴みにする。ギリギリと力を込められ、骨が軋む音が聞こえるようだ。歪もうとする顔を、歯を食いしばることで耐える。
炯々と鈍く輝く目で、怪物はこちらを睨みつけ、ゆっくりと口を開く。
「……シロちゃん……ちょっとヤリすぎよ」
「あ、ああ……す、すまない」
「すまないですむと思ってるのかしら?」
「うっ……そ、それは」
「あたしはね、若くして死んでしまった妻の分までジェシカちゃんの可愛がろうと思ってこんな風になったの」
「そ、そうなのか?」
「そうなのよ……だけど……」
顔を下に向けたスカロンが、ゆっくりと顔を上げる。
士郎に顔を向けたスカロンの顔には、いつもの不気味な笑みはなく。
「あまりヤリ過ぎたら……男の……父親の俺が出てしまうじゃねえか……どうしてくれるシロウ」
口の端を曲げ、咬み殺さんばかりに睨みつけてくるスカロンの顔があった。
「すっ――」
「だから、ね。ヤルなとは言わないけど。ちょっと、抑えてね……ね、シロちゃん」
反射的に謝ろうとする士郎の声に、いつもどおりの不気味な笑みを浮かべたスカロンが声を被せた。
顔をヒクつかせながらも頷いた士郎に、スカロンは肩から手を離すと、ぽんぽんと士郎の肩を叩く。じっと士郎の顔を見つめたスカロンは、一度ニッゴリと笑うと、士郎に背を向けた。
「ああ、そうそうシロちゃん。今日はルイズちゃんとジェシカちゃんと一緒に買い物に行くから、お店の準備お願いできるかしら……もちろん一人でね」
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