第二章
[8]前話
夫婦は三つ星フレンチのレストランに郁恵明るい顔立ちで大きな黒目がちの目と小さな唇に黒いおかっぱの髪に一五八程の背で均整の取れたスタイルの彼女もだった。
誘った、すると郁恵は跳び上がらんばかりに喜んで是非と言った。そうして四人共ドレスアップしてだった。
レストランに入ってディナーを食べた、すると。
「美味しい美味しい」
「おい、それだけか?」
「感想それだけ?」
夫婦はただそれだけ言ってひたすら笑顔で食べる郁恵に呆れて言った。
「某漫画の火の柱じゃないのよ」
「顔もそうなってるぞ」
「あの、ここ最高級のレストランでね」
「実際とんでもない美味さだろ」
「それで美味しいだけって」
「某味っ子のアニメ版みたいにとは言わないけれどな」
「だって実際に美味しいから」
郁恵の返事は変わらなかった、やはりひたすら美味しいと言うだけだ。
「他に言うことある?」
「お前子供の頃からそうだな」
兄としてだ、友則は郁恵に言った。
「美味いと思ったらな」
「美味しいだけって言うのね」
「ああ、何処がどうとかな」
「だって美味しいから」
郁恵の返事は変わらなかった、四人用の席を囲んで座って最高級の料理を銀の食器で食べながらの言葉だ。
「他にはね」
「全く、どうしたものだろうな」
「折角だから色々言って欲しいのに」
雅美も困った顔で言う。
「本当にね」
「美味しいよね」
雅美を子供にした様な喜美代も言ってきた。
「今日の晩御飯」
「そうよね」
郁恵は喜美代とても仲のいい姪に満面の笑顔で応えた。
「昨日の牛丼もよかったけれどね」
「お姉ちゃん昨日牛丼だったの」
「うん、そっちも美味しかったよ」
「それで今日もなのね」
「凄く美味しいよ」
フォアグラを繊細に調理したものを食べつつ言う。
「本当にね」
「そうだよね」
「さっきはキャビアとトリュフでな」
「今度はフォアグラなのに」
夫婦は笑顔で言う郁恵を見つつ呆れた。
「それも最高級の」
「他の食材だってそうで」
「物凄い腕でお料理作ってるのに」
「牛丼と一緒か」
「本当にいい娘なのに」
「どんな料理も美味いで終わるのがな」
どうにもと言うのだった、そして郁恵はデザートもワインも全てだった。
美味いで終わった、そして翌朝のお茶漬けもそれで終わったと彼女かと同居している友則の両親から聞いて夫婦はやれやれとなった、だが郁恵は平気で喜美代も同じであった。
他に感想ないのか 完
2022・7・24
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ