第二部 1978年
影の政府
魔都ニューヨーク その2
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る。
焦るな、慌てるな、と心を落ち着かせながら、
「戦術機部隊参謀のベルンハルトの妹、アイリスディーナ・ベルンハルトに」
男は、ようやくマサキの眼から視線を外し、
「少しばかり、貴様の好いた女は有名すぎたかな。フフフ」と、笑って見せた。
「御迷惑かな。このような心を許した話などをするのは」と、御剣の頬が笑った。
「余計な心配は要らん」
「どちらにしても、そなたも身を固めてもらわねばなるまい」
何とも言えぬ殺気と、入り込むような言葉に、マサキは自分の肝を触られるような感覚を覚えた。
「貴様等の知った事か。俺は自分が好いた女をどうしようと、勝手であろう」
護衛達は、反射的に、右手を拳銃の有る脇腹に隠し、威嚇の姿勢を取る。
久しぶりの長旅で疲れ、空港内で、余計な騒ぎを起こしたくないマサキは、見ぬふりをした。
「それより、当今や、将軍に側室など居るのか。
決まった家から正室を取り、結果的に近親婚を続けていれば、やがては破滅する。
竹の園が、武家が、頼みとする血統上の正当性、男系血統が絶え果てる。
御剣よ、俺の心配より、そっちの方が大事ではないのか」
マサキがあんまりにも堂々と言うので、御剣は言を横に譲った。
「紅蓮よ。どう思う」
紅蓮醍三郎は、待っていましたと言わんばかりに、血走った眼でねめつける。
「殿下のみならず、主上の在り様にまで口に出すとは、おそれ多い。
ここがニューヨークでなければ、この場で切り捨ててやるものを」
紅蓮は、帯びている打刀の柄を右手で掴むと、鯉口を切った。
「言うに事欠いて、刀の柄に手を掛けるとは。なにが武家だ。笑わせるな。ハハハ」
満面に喜色をめぐらせたマサキは、腰に手を当て、周囲が驚くほどに哄笑して見せた。
見上げるばかりの偉丈夫である紅蓮の面を下から見上げながら、
「ハハハハハ。『大男、総身に知恵が回りかね』という諺、その通りではないか。
蛮人の露助、傲慢な北部人や粗野な南部人に相応しい言葉と思ったが、違うようだな。
女たらしの優男、篁の方が余程武士らしいわ」
「き、貴様!」と、紅蓮は、途端に嚇怒し、眉間の血管を太らせた。
「ほれ、どうした。俺が憎いなら言葉で返してみよ。
次元連結システムの一つすら作れぬ、この世界の人間など怖くもなんともないわ。ワハハハハハ」
マサキの笑い声が途切れた。
遠くだった。突然、夕暮れのJFK国際空港のしじまを破って、足音が響いた。
マサキ達が身構える間もなく、国連職員の水色のチョッキを身にまとった一団が駆け寄って来る。
中には、制服を身に着けている物も居るから、空港の保安職員か
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