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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
魔都ニューヨーク その2
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かみしも)姿の者たちに守られるように、(おり)烏帽子(えぼし)小素襖(こすおう)姿の男が立っていた。
4尺近い太刀を太い太鼓革を通し、ずり落ちないように佩いているの見て、真剣である事が遠目にも判る。
 彩峰は、薄黒(うすぐろ)の小素襖姿の男に駆け寄ると、軍帽を脱いで、
態々(わざわざ)のお出迎え、ありがとうございます」と、深々頭を下げ、慇懃に謝辞を述べた。
男は、太刀に左手を乗せながら、軽く頷くと、マサキの方を向いて、
「そなたが、木原マサキ殿か」と問いただした。
マサキは、浮かぬ顔で、
「そうだが」と素っ気なく返す。
マサキは、少しばかりおいて、男の様子をしげしげと見る風であった。
「で、貴様は何者なんだ。俺に名を聞いておいて、答えぬのは無礼であろう。
あれか、名を名乗らぬと言う事はどこぞの宮様か、将軍の身内か」
彩峰たちが急にそわそわし始めたが、気にせず、
「では、この機会に、お見知りおき下され。
見共(みども)は、煌武院(こうぶいん)傍流の御剣(みつるぎ)雷電(らいでん)と申すものでござる」と、堂々と名乗った。
さっぱり誰であるか分からぬマサキは、彩峰に顔を向け、
「煌武院とはなんだ」と、訊ねた。
彩峰は、面色蒼く、震えながら、
「煌武院とは、徳川倒幕以来の名族。今の殿下の御実家だ」と短く答え、マサキをキュッと睨んだ。
「すると、将軍の親族か」
「雷電公は殿下の大叔父に当たる方でもあり、今の御台様は雷電公のご息女……」
「今の将軍の妻の父親で、しかも将軍の大叔父か。
まあ、名族どうしの近親婚は良くある話だからな」とあけすけに答えた。
彩峰は、マサキの無礼を、打ち(ふる)えて見せながら、
「いささか、BETA退治に明け暮れた日々を過ごした世間知らずの小童ゆえ。
無礼な振る舞い、この彩峰に免じて、お許しください」
と、深々と頭を下げ、平あやまりに詫び入った。
御剣は気にすることなく、
「フフフ。これが真の名乗り合いよ。彩峰、気にするな」と打ち笑った。

「どうした、気分でも優れぬのか」と、御剣が、なおも尋ねるので、マサキは、
「少しばかりな」と、答えて、その場を過ごそうとした。
御剣は、胸元まで伸びた顎髭を撫でながら、
「よもや恋の(わずら)いとやらではあるまい……」
(たかむら)と同じ病気さ」
「して、どこぞの誰に()れた」
「……」
マサキは答えなかった。面白くなさそうである。持ち前の気儘な態度が出たようであった。
「木原、返答は」
マサキが背筋を伸ばし、黙っているので、いずこから、注意する様な叱咤(しった)が飛ぶ。
「東ドイツの娘」と答えると、御剣の眼は、マサキの眼を捕らえて、離さない。
マサキは、脇で立ちすましている護衛の全身から殺気が上るのを感じられ
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