第二部 1978年
影の政府
魔都ニューヨーク その2
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物取引で小金を得て、財を成した家でな。
彼が近接戦闘用の長刀を開発できたのも、その資金を元手にしたところが大きい」
「篁は多才な男だ。女遊びの才の他に、商才もあったのか」
彩峰の言におどきながら、すこし無気味な感を抱いたふうでもあった。
その日の夕刻、マサキは、引率の綾峰たちと一緒に、パンナム航空の大型ジェット機に乗り込む。
まだ、心の奥底には、アイリスディーナの香りを漂わせ、茶褐色の70式制服に身を包んでいた。
あの口付けは、今まで感じた事のない高揚を覚えさせ、まるで童貞の様な、初々しい気分にさせた。
これまでの恋路の事が、酷く色あせて見える、そんな抱擁だった。
しかし、既に賽は投げられた。
今、自分が向かうのはニューヨークの国連本部だ。
ソ連を壊滅させる総仕上げに、彼の用意したKGB秘蔵の資料を持って、国際社会に一大波乱をもたらす。
そんな企みを心の中に抱きながら、目を閉じながら、ドイツを後にした。
ニューヨークに向かう機内の中で、まもなくマサキは眠りに入った。
日々の戦いで、疲れた体と心を癒す為、泥の様に眠った。
この世界に来て以来、目の前に異形の化け物と相対してから、こんなに眠ったことがあったであろうか。
眠りながらマサキは、このまま夢の中に消えてしまいたい……
それ程までに深く、静かな眠りであった。
『大変お疲れさまでした。間もなく当機は、15分ほどでニューヨークのJFK国際空港に到着いたします。
シートベルトや座席の確認等を今一度、お願いいたします。
本日は、パン・アメリカン航空をご利用いただき、ありがとうございました。
またのご利用をお待ちしております』
スチュワーデスのアナウンスの声で、目が覚めたマサキは、
「もう着いたのか」と、美久を振り向くも、通路を挟んだ向う側の彩峰が、
「身支度したら、ニューヨークの総領事館に行く手筈になっている。
ドイツ娘への想い出以外は、忘れ物をするなよ」と、声を掛けた。
気を紛らわす為に、ホープの箱を取り出して、紫煙を燻らせていると、
「アイリスディーナさんは、貴方と同じところに立っていられない人なんです。
だから、今回の米国行きは、諦める機会と思って……」
美久は、何時にない真剣な表情で、押し黙るマサキを見つめながら、
「貴方が諦めて頂ければ、特権階級の娘です。
東独政府や党に保護されて、きっと彼女は平凡な一生を、幸せな人生を送られると思います」
と、慰めるような言葉を、静かに告げた。
彼が、物寂しそうな表情をしている内に、パンナム航空のボーニング747は着陸に入った。
マサキは静かだった。
周囲の人間が心配する程、静かにしながら、タラップを降りていく。
すると、裃(
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