第六十話 何があっても自分はその七
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「だからどうでもいいことになればね」
「言われても何とも思わなくなって」
「嫌にも思わなくてね」
「怨まないのね」
「あの娘も復讐鬼にならなかったらね」
「よかったのね」
「手酷く振られて」
そうなってというのだ。
「それで笑って言われ続けて」
「余計に傷付いて」
「そうなったから」
「それでも失恋して復讐鬼になったら駄目なのね」
「自分が辛いからね」
外ならぬ自分自身がというのだ。
「だからね」
「怨まないことなのね」
「そのまま死んで」
怨みを飲んだままそうなってというのだ。
「それで怨霊になったら嫌でしょ」
「怨霊になりたい人もいないわね」
咲もこう言った。
「やっぱり」
「その娘は何回死んでも忘れないって言ってるのよ」
「もうそれは怨霊になるかも」
「そうでしょ、だから私も心配なの」
「怨霊にならないか」
「そこまでね。怨霊は実在するのよ」
愛は言い切った。
「人間に心があるから」
「心があるから怨霊は存在するの?」
「そうよ、心は魂よ」
「魂なの」
「その魂が身体から出れば幽霊なのよ」
「そうなるの」
「生きている人から出れば生霊でね」
そうなりというのだ。
「死んだ人から出ると死霊なのよ」
「人間と幽霊の違いって身体があるかないかだけなの」
「それだけよ、だから心が怨念に囚われてね」
そうなってというのだ。
「死んだらね」
「死霊になって」
「その死霊が怨霊になるのよ」
「そうなの」
「それで生きていても怨霊になるのよ」
「身体から出たら」
「そうよ、源氏物語や雨月物語でも出たわよ」
こうして古典の作品でというのだ。
「どっちでも恋愛のことで怨みを抱いていて」
「生きているうちに身体から出てなの」
「怨霊になっていたのよ」
「生きていても怨霊になるのね」
「そして死んでもよ、天神様だってそうだしね」
菅原道真のことである、太宰府天満宮が実は怨霊を鎮める為のものであることは歴史を紐解けばわかることだ。
「政争に負けて怨みを呑んで亡くなってね」
「怨霊になって朝廷に雷落としたのよね」
「そうなったから」
だからだというのだ。
「亡くなった場合もね」
「怨霊になるの」
「怨霊になったらもう人間じゃないわよ」
「人間じゃないの」
「もう魔物だから」
そう言っていい存在だからだというのだ。
「もうね」
「人間じゃないの」
「そう、人間でない何かになっていて」
そうなってというのだ。
「魔王にもね」
「なるの」
「ちょっとあんまりにも怖いからどなたとは言えないわ」
愛は咲に畏まってそして自然と小声になって話した。
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