第一章
[2]次話
親子は絆
中原貞治は両親を知らない、彼がまだ赤子の頃に交通事故で亡くなっている。それで今は父の兄彼から見て叔父夫婦の家で養子として育っている。
叔父夫婦の家は京都の祇園にある昔ながらの料亭で幕末の志士達が来たことでも有名だ。彼はその店の跡取りだったが。
ある日だ、彼は通っている地元の大学から帰ってから今の両親に問うた。眼鏡をかけていて四角い顔で黒髪を左で分けている、背は一七一程でがっしりとした体形だ。
「あの、ちょっといいかな」
「どうしたんだ?」
父の福嗣が問うた、面長で白髪頭の気品のある顔立ちの男だ。
「一体」
「何かあるみたいね」
母の美佐も言ってきた、黒髪を後ろで束ねた丸顔で優しい顔立ちの女性だ。二人共着物姿である。
「言ってみて」
「何だ?」
「僕養子だけれど」
言うのはこのことだった。
「お店継いでいいのかな、妹達がいるから」
「婿を取ってか」
「それでお店を継いでもらうっていうのね」
「うん、二人はお父さんとお母さんの実子だから」
高校生の双子の麻美と亜美のことを話した、二人共黒髪は長く楚々とした可愛らしい外見で近所でも評判の美人姉妹だ。
「二人のうちどちらかがね」
「いや、お前は男の子だからな」
父はすぐにこう返した。
「だからな」
「お店はなんだ」
「お前が継ぐのが自然だろう」
「あのね、養子とかじゃないのよ」
母も言ってきた、それも咎める様な顔で。
「それは」
「そうした問題じゃないんだ」
「貴方は私達の子供よ」
このことは絶対だというのだ。
「だったらね」
「それならなんだ」
「お店を継ぐことはね」
「当然なんだ」
「それが筋よ」
「血がつながっていないというのか」
父も咎める様に言ってきた。
「そうなのか」
「実のお父さんとお母さんは次男夫婦でね」
今の両親は長男夫婦でだ、実の両親はサラリーマンとOLであった。
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