第六百六十四話 連合軍への考えその十三
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「何百万も殺したことはな」
「なかったですか」
「これも無理であった」
「そうでしたか」
「こ奴の場合は色々な殺し方をして誰彼なしに殺したとあるが」
蜀碧という書にそうある。
「誰彼なしに惨い殺し方をして楽しむ奴に誰が仕える」
「誰彼なしですよね」
「自分の妻子や愛妾でさえも殺しておった」
「もう完全におかしいですね」
「そんなおかしな奴の傍におったらじゃ」
「何時自分が殺されるかわからないですね」
「事実部下まで殺したとある」
その蜀碧という書にはだ。
「本当に誰彼なく色々な残虐な殺し方をしてな」
「そうしてですか」
「三百万程の人口が一万数千程になったという」
「無茶苦茶ですね」
「そんな奴に殺されると思えばどうする」
「普通に寝首かきますね」
野上君は即座に答えた。
「冗談抜きに」
「そうなるのう」
「ええ、殺人狂に誰も仕えないですよ」
「実際に安禄山はそうなって我が子に殺された」
目が見えなくなり凶暴化したという、極端な肥満体であったので糖尿病が進行して盲目になったらしい。
「それを思うとな」
「張献忠もですね」
「言われている様なことをしておったらな」
「殺しはじめた時点で、ですね」
「逆に殺されておったわ」
「誰もついてきませんね」
「誰が自分を殺すかも知れん奴に仕えるのじゃ」
博士は野上君に問うた。
「おらんじゃろ」
「ですね、絶対に」
「ソ連の様な逃げられない国なら兎も角な」
「もうそこにいるしかないですね」
「それでも殺そうとじゃ」
その様にというのだ。
「思う者がおるとスターリンは思っておった」
「そんな状況でもですね」
「左様、ましてスターリンはまだ少しでも理由があって殺しておったが」
「張献忠は訳なくでしたね」
「殺戮が楽しみであった」
「そんな奴絶対に寝首かかれますね」
「人は絶対に寝るからのう」
そうせねば死ぬ、人は寝なければ何時かは死んでしまう。
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