第二百五十五話 ヴェネツィアでの再会その五
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「お醤油は凄いわね」
「そのお醤油の味が楽しめるのね」
清音は嬉しそうに述べた。
「条約を結ぶ時は」
「そうね。ただお醤油はそっちもあるでしょ」
奈央は醤油について語る清音に真剣な顔で返した。
「そうでしょ」
「ああ、魚醤ね」
「あるじゃない」
「それはしょっつるでしょ」
清音は奈央に返した、やはり真顔であった。
「そうでしょ」
「大豆のお醤油じゃないっていうのね」
「しょっつるもいいけれど」
それでもというのだ。
「あれは匂いが独特でね」
「また違うっていうのね」
「私達が今言うお醤油とはね」
また、というのだ。
「違うから」
「そういうことね」
「それで大豆のお醤油をね」
今言っているそれをというのだ。
「味わえるからね」
「楽しみなのね」
「そうよ、お味噌もあるわね」
「持って来たわよ」
奈央は清音に笑顔で答えた。
「お味噌もね」
「そうなの」
「いいでしょ」
「ええ、こっちの浮島のお料理もいいけれど」
「日本人ならね」
「大豆のお醤油にね」
それにというのだ。
「お味噌もよ」
「欠かせないわね」
「慣れ親しんだ味は」
何といってもというのだ。
「離れられないわ」
「そうよね」
「それならお味噌もね」
これもというのだ。
「頂くわ」
「それではね」
「お味噌汁に」
夕子も味噌と聞いて言った。
「焼き味噌も頂きたいですね」
「焼き味噌もですか」
「はい」
紅葉に微笑んで答えた。
「そちらも」
「焼き味噌がお好きですか」
「実はよく召し上がります」
「そうなのですね」
「お家で。元々父が好きで」
それでというのだ。
「私もです」
「お好きですか」
「ご飯にもよく合うのね」
「だからですか」
「よく頂きます」
「そうですか」
「葱と生姜を細かく刻んで」
夕子は紅葉に焼き味噌の作り方も話した、焼き味噌と一口に言ってもただ味噌を焼くだけではないのだ。
「そうしてお味噌に混ぜてです」
「確か板に塗って焼きますね」
「そうします」
「織田信長さんもお好きだったとか」
「それで父もです」
「織田信長さんのことからですか」
「父は信長さんがお好きなので」
その為にというのだ。
「食べものもです」
「食べられていますか」
「はい、ただ」
「ただとは」
「父は酒好きです」
夕子は自分の父のこのことも話した。
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