第一章
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王道ツンデレ
長縄幸美は国立大学を出て大手証券会社に就職した、非常に努力家で真面目でいつも熱心に仕事をしている。
薄茶色の長いやや癖のある髪の毛で大きな黒目がちの目と白めの肌にピンクの唇にやや面長の顔である。年齢は二十五歳だが。
よくだ、こう言われた。
「えっ、二十五歳ですか」
「はい、そうです」
かなり高い可愛らしい声で答えるのが常だった。
「私二十五歳です」
「てっきり未成年とです」
「二十五歳ですから」
その一四六センチの背と童顔で言うのだった。
「運転免許も持ってます」
「はい、確かに」
その免許を見て職務質問をする警官は何時も頷いた。
「そうですね」
「ですから宜しくお願いします」
「申し訳ありませんでした」
車を運転していても居酒屋にいてもだった。
幸美はよく聞かれた、それで不満に思っていた。
「背とお顔のことはどうしようもないわよ」
「まあそう言うな」
大学から一緒で同期の石渡周作がいつもここでこう言った。一八三程の長身ですらりとしていて黒髪をセットした細面で眼鏡の男だ。
「言っても仕方ないだろ」
「それはそうだけれど」
「ちゃんと二十五歳なんだからな」
実際の年齢はというのだ。
「だったらな」
「それを証明したらいいから」
「だからな」
それでというのだ。
「気にするな」
「それはそうだけれどね」
「それよりもだ」
石渡は美幸に言った。
「お前はあらためなければいけない行いがある」
「幾つ?」
美幸は問うた、その改善点を。
「それは」
「一つだ」
「その一つは何なの?」
「青柳昴さんへのだ」
これだというのだ。
「もうちょっと素直にな」
「青柳さんって誰よ」
「しらばっくれるな、開発部のな」
そちらの若きエースと言われている、きりっとした端整な顔立ちにテニスをしていただけはあるすらりとした長身で奇麗な長めの髪の毛が鬣の様である。
「あの人にいつもツンケンしてるけれどな」
「それは気のせいよ」
「気のせいじゃないだろ、実際にな」
石渡はさらに言った。
「わざときつく言ったり何か教えても気が向いたからとかな」
「言ってるって言うの」
「そういう態度止めろ」
こう言うのだった。
「これからはな」
「どうしろっていうのよ」
「素直になれ」
「素直ってなる理由ないわよ」
むっとなった顔を逸らしてだ、美幸は石渡に答えた。
「あんな奴に」
「そう言って何で顔を赤くさせているんだ」
「急に熱が出て来たのよ」
「風邪ひいたっていうのか」
「そうよ」
「そんな筈があるか、兎に角な」
石渡は美幸にさらに言った。
「素直に好意を向けろ」
「好意って何よ好意って」
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