第二章
[8]前話
それで誰かが貰ってくれるのを待っていたがやがて。
三十代の中年の女の人がだった。
スタッフの人達のところに行ってこう言ってきた。
「あの子を家族に迎えたいんですが」
「幸をですか」
「そうされたいんですか」
「家族に迎えられたいんですか」
「はい、是非」
こう言うのだった。
「あの子を見て家族に迎えたいと思いましたし」
「そうですか、ではです」
「宜しくお願いします」
「家族に迎えて下さい」
「そして可愛がって下さい」
「そうさせてもらいます」
女性はスタッフ達に笑顔で応えた、優しく澄んだ笑顔だった。
スタッフ達は女性に幸を手渡す時に彼女に声をかけた。
「幸幸せになってね」
「これから幸せに生きてね」
「そうなってね」
「ニャア」
わかったわ、そうした感じでだった。
幸はスタッフ達に鳴いて応えた、そうしてその人に連れて行かれた。それを見てスタッフの人達は話した。
「よかったわね」
「最後に残ったからどうなるかって思ったけれど」
「いい人に家族に迎えられてよかったわ」
「あの人なら大丈夫ね」
「お婆さんだけれど」
幸はというのだ。
「それでもね」
「幸せになって欲しいわ」
「他の子達と同じく」
「この世に生まれたから」
「それならね」
今は一匹もいなくなった会場で話した、そうしてだった。
皆で後片付けをしてその場を後にした、それからそれぞれの猫達が幸せに過ごしているという話を聞いてあらためて笑顔になった。その猫達の中には幸もいた。
最後に訪れた幸せ 完
2022・7・20
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