第72話 ある小作戦の終了
[7/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だから負けるんだな」
確かにこちらには余裕はある。一二隻もの巨大輸送艦は、四〇〇〇隻に満たないエル=ファシル攻略部隊の腹を満たすのには十分だ。だがそれに二倍する戦力を支えられるかと言えば、それはNOだ。もし長期戦を計画するなら必要なものは燃料・食糧・兵器だけではない。
「エル=ファシルに前進基地造設分の資材を廻せれば、話は違っていたんでしょうけどね」
「宇宙港がまるまる使えるからな。事前に連絡をくれれば説明してやったのに、『なんで教えてくれなかった』と逆ギレだ。もしかしたら今頃、巨大輸送艦がエルゴン星域を迂回して戻ってくるかもな」
そんなことは出来やしない、とカステル中佐は吐き捨てた。統合作戦本部も泥縄な作戦をダラダラ継続させるのは意味がないと考えるだろうし、中央政府も国防委員会もこれ以上『イゼルローンで』戦力を失わせて支持率を下げるようなことは望んでいない。
「本部長と司令長官が喧嘩して、一週間というところですか」
「そんなところだな、ボロディン少佐……そういえば貴官、数学は得意か?」
「得意という程、得意ではありませんが」
作戦立案は殆ど手仕舞いだからもしかして後始末の手伝いをさせるのか。そう思ったのが顔に出てしまったのだろう、カステル中佐はニヤリと笑うと、ブライトウェル嬢が解いている問題集の一か所を軽く二度指で叩いて言った。
「ここ、解き方を間違えてるぞ。ボロディン『先生』」
◆
宇宙歴七八九年七月一九日。戦艦アイアースより全軍撤退の司令が下った。アスターテ星域には軍事偵察衛星とドーリア星系からの哨戒のみが残ることになった。
エル=ファシル星域には第五四四独立機動部隊が、新規に編成されたエル=ファシル星域防衛艦隊の到着まで残留することになる。防衛艦隊の司令官と戦力は、エル=ファシル星系攻略作戦開始以前より決定しており、既に戦力化されているので、帰還までの時間はそれほどかからないだろう。
エル=ファシルに降り立った地上軍は、しばらくそのまま残留して戦場整理することになる。まさかの無血占領だったが、その代償として建造した『ボーデヴィヒ要塞』の後始末がある。大気圏内なので解体して埋め戻すまで一月はかかる。ついでだからとその間に宇宙港やインフラ設備だけでなく個人住宅に至るまで整備するとのことだ。これでは戦争しに来たのか掃除しに来たのかわからないと、ブライトウェル嬢の体力強化指導に来ていたジャワフ少佐は大きな肩を竦めていた。
エル=ファシル星系攻略部隊の戦いはこれで終わることになる。ハイネセンに戻れば『勝利』式典が開催されるだろうが、連合部隊は解散されその名の通り個々の独立部隊へと戻ることになる。独立部隊がそのまま正規艦隊の補充として吸収されてしまうこともある。
最終的
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ