第72話 ある小作戦の終了
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イフェルは椅子をわざときしませるように音を立てて座った。ちなみに今は不在だが、その席はカステル中佐の席だ。
「ひたすら嫌味とマウンティングの連続でしたよ。なんだったらマーロヴィアの時のロックウェル少将の方がはるかにマシです」
「そいつはご苦労だったな」
双方の指揮官の経歴、一連の作戦行動の結果。あまりにも対照的な現実に、嫌味を言わなければメンタルが保てないような状況なのだろう。中学生ならともかく、それが宇宙の半分を統治する国家の宇宙艦隊司令長官とその幕僚とか笑うに笑えない。
「ニコルスキー先輩の申し訳なさそうな顔が、未だに頭から離れませんよ」
はぁ〜と大きく溜息をつくファイフェルに、俺は何も答えなかった。
もう来季の宇宙艦隊司令長官改選でリーブロンド元帥の目はない。イゼルローン攻略戦の大敗は勿論影響しているが、地上軍側との拗れや後方運用の失敗など、回避できるはずの失敗を積み重ね過ぎた。
エル=ファシルの奪還も爺様あってのことだ。本来任務でもないアスターテの支配圏優勢まで助攻部隊に背負わせたわけだから、元帥の作戦指導に問題があると、軍上層部もはっきりと認識するだろう。下っ端とはいえニコルスキーも幕僚の一員として、その経歴にケチが付くことになる。
「ハイネセンに帰ったら、ひと騒動ありそうだな。誰が宇宙艦隊司令長官になるか、さっぱり分からん」
「そうですよね。ウチの艦隊も巻き込まれなければいいんですけどね」
「そうだな」
ここには男二人と女の子一人しかいない。第三の男の声に振り向くと、そこには薄型端末を脇に挟んだカステル中佐が、いつの間にか立っていた。
「ちゅ、中佐」
「楽にしてていいぞ、ファイフェル中尉」
まったく表情と違うセリフを吐いて、カステル中佐はファイフェルが慌てて立った後の自分の席にゆっくりと腰を掛ける。
「イゼルローン攻略部隊の補給担当者と話をしたが、奴ら艦隊付属の後方部隊しか連れてきていない。後はみんなダゴンから『直帰』させやがった」
「じゃあ考えていたより早く帰れそうですね」
巨大輸送艦をハイネセンへ直帰させるということは、アスターテでの長期戦は考えてはいないということだろう。エル=ファシル星域は奪還したばかりで補給基地はないし、ドーリア星域にあるのは防衛艦隊分の備蓄しかない。もう一度ダゴン星域に戻ることはないだろうし、ましてや帝国軍の勢力圏であるパランティア星域を突破して前線補給基地のあるファイアザード星域に向かうなんてことはありえない。艦隊の補給物資が尽きる前に、撤退するだろう。そう考えて俺が言うと、カステル中佐は軽く鼻息をして嘲笑した。
「アイツら、こちらに余裕があるか聞いてきたぞ」
「本当ですか?」
「本当さ。作戦日数も艦艇数も数えられないバカなんだろうよ。
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