第72話 ある小作戦の終了
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判断でエル=ファシルに撤退する」
「ハッ!」
「各隊はいつでも撤退できるよう準備だけは整えておくように。何しろ巨大輸送艦が一二隻もおるから、飯はたらふく食っていいが、足が止まらないよう鍛えておけ」
その結論に、各隊の指揮官・参謀長は席を立って爺様に敬礼する。爺様も席を立ちそれに答礼すると、会議は解散となった。だが面倒なことになったなという気持ちもありながら、彼らの表情にはまだまだ余裕がある。仮に一万隻の『増援』があったにしても、アスターテ星域全部の占領は難しいが、少なくとも自分達はこの戦いで『負けなかった』のだ。
会議が終わり、俺も司令艦橋にある自分の席に戻ろうと会議室を出ようとした時、爺様に呼び止められて小会議室に残った。席を立った指揮官達の微妙な余裕と諦観が、まだ室内に残っているようにも思える。三〇人も入れば混雑するような会議室も、たった二人では奇妙に広く感じる。
「ジュニア。今回もご苦労じゃった」
立って話を聞こうとした俺に、着席するよう促すと爺様は席に深く腰を落ち着け、大きく溜息をついた後そう言った。それは何か、言いにくいことを言いたそうな仕草だった。
「モンシャルマンの指示をここまで翻訳できた士官を、儂は今まで見たことはない。アントンでもここまで上手くは出来んかったじゃろう」
「……父のことでしょうか」
転生したこの世界における父親。シトレの右腕と呼ばれた勇将で、グリーンヒルも荒々しいと評価していた父。同じシトレ派ともいうべき爺様と知己があるのは当然だろうが……
「この先のパランティアじゃったな。儂もシトレ少将指揮下で、その戦場におった」
パランティア星域。星系はケルコボルタ。一五年前、シドニー=シトレ少将に率いられた第二八高速機動集団は、辺境航路を回ってファイアザード星域からパランティア星域へ侵入を果たした。目的はアスターテ星域の支配権獲得を目論む同盟軍主力部隊の助攻として、である。
シトレ自身も、そしてその指揮下にいた中級指揮官も手練れ揃い。父アントンは次席指揮官として第二部隊を率いていた。爺様は先任の大佐として基幹部隊麾下の巡航艦戦隊一二〇隻を率いていた。ケルコボルタでは事前の情報以上の戦力が待ち構えており、戦線は一進一退。とにかく時間を稼ぐことが目的であった以上、そう簡単に撤退するわけにもいかない。
数的に不利な以上、第二八高速機動集団はジリジリと押し込められていく。爺様は前衛の一部隊として右に左にと動き回りつつ、その統制された火力を存分に見せつけた。これは爺様からこの機動集団の編制を指示された際に、参考として見たシミュレーションにもあった。
だが爺様はその時は今よりもう少し機動的に戦力を動かしていた。シトレの指示で左翼第三部隊の救援に移動した際だった。爺様が移
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