第72話 ある小作戦の終了
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宇宙歴七八九年 六月二八日一三〇〇時 アスターテ星域アスベルン星系 戦艦エル・トレメンド
予定通りの凶報という言葉がチラチラと頭がよぎるが、現状況はそれ以外の言葉が思い浮かばない。
詳細な報告はまだだったが、第二・第五・第六の三つの艦隊と、ほぼ半個艦隊分の小集団戦力を糾合した、第四次イゼルローン攻略戦は、殆ど一方的に打ちのめされ失敗したことは確かだ。残存戦力は約半数。後に俺達がいるこのアスターテで、金髪の孺子にしてやられる程度の被害とみていい。
出征した兵士達には悪いが、知人の殆どが否定的な結果を予測していた為、ある程度心構えができていた故に個人的にはショックは少ない。だが八月の人事異動において更新されるであろう士官学校同期名簿の名前の色が、数多く赤く染まっているであろうことは想像に難くない。同期の年齢は二五歳から三〇歳。階級はだいたい中尉か大尉か少佐。専攻で一番人数の多い戦術研究科ならば駆逐艦の艦長か、はたまた戦艦の運用長か。冥界の門をくぐった顔見知りが何人もいるだろう。転生しているかどうかは分からないが。
とにかくエル=ファシル奪還作戦と、追加されたアスターテ方面襲撃戦を勝利した第四四高速機動集団と、同行した四つの独立機動部隊の差配を、爺様は戦略と戦術の両面からしなくてはならなくなった。何しろエル=ファシル攻略戦の上級司令部は宇宙艦隊司令部になるが、その総帥たる宇宙艦隊司令長官がイゼルローン攻略戦の指揮を執って、そして負けている。
「選択肢は二つしかない。撤退か、防衛か、だ」
戦艦エル・トレメンド艦内の司令部小会議室に集まった各独立部隊の指揮官と参謀長、および第四四高速機動集団第二・第三部隊の指揮官と参謀長、そして高速機動集団司令部要員とニコルスキーの合わせて一六名を前に、モンシャルマン参謀長は短く言い切った。
「司令長官からの命令はまだだが、まずここにいる全員の認識を一致させておきたい。現有戦力でのアスターテ星域、あるいはアスベルン星系の永続占領維持はほぼ不可能と考えるが、どうか?」
「モンシャルマン参謀長に同意する。此処には拠点となりうる基地も、それを建設できる小惑星も、建設する資材もない」
即座にそう返したアップルトンに、他部隊の司令達も賛同した。常識的に考えれば当然のことだ。だが時として上級司令部は常識を超える指令を出すし、広く見れば政治的な問題点もある。
特に大兵力を動員して大敗した宇宙艦隊司令部が、何らかの成功をもってその敗北を糊塗しようとするのは容易に想像できる。エル=ファシル星系の奪還、無血占領、ひいては星域支配圏奪還の成功では到底不足だ。何しろ作戦指導・実施したのは爺様であり、イゼルローン攻略戦部隊の関与は帝国軍の視線誘導ぐらいで、実働戦力においては何ら寄与していな
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