序幕
[2/4]
[1]次 [9]前 最後 最初
かお兄ちゃんと帰りたいなーと思って迎えに来ちゃった」
「家で待ってりゃいずれ帰ってくるのにか?」
苦笑しつつ日菜の言葉に返答する洸夜。
「うん。早くお兄ちゃんに会いたかったから」
満面の笑みでそう答える日菜。そんな無邪気な妹の姿に、洸夜の頬も緩むのであった。
「取り敢えず帰るか」
「うん」
2人は、たわいも無い会話をしながら自宅へと向かう。そして家が近づいて来た頃、不意に日菜がこんなことを尋ねる。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「何か、隠してる事ない?」
「……なんでだ?」
突然の問いかけに、洸夜は立ち止まり首を傾げる。それに合わせて、日菜も足を止める。
「お兄ちゃん、どこかよそよそしいもん」
「え、よそよそしい?」
「うん。それに??知らない子の匂いがする」
日菜の言葉を聞いた途端、危険を告げるかのように洸夜の背中を悪寒が走る。
「私、分かるんだよ? 人の匂いとお兄ちゃんの匂いの違い」
「……俺から、その違う匂いがするってことか?」
冷や汗を垂らす洸夜の傍らで、日菜はゆっくりと頷く。
「それで、お兄ちゃんが何かを隠そうとしている。これは、何かあるよね? 寧ろないっていう方が無理があるよね?」
問い詰めてくる日菜。その瞳は、先程まであった無邪気さを失い、暗く冷徹なものへと成り果てていた。
「……あった」
「何が?」
「今日、一緒に日番やってた女子と黒板消すときぶつかった」
答えた洸夜を日菜は見つめる。そして何かを納得したらしく1人で頷く。
「ふーん。お兄ちゃんがそういうならそんなんだろうね」
「……ああ。俺の不注意だ」
「今回はそれで信じるよ。もし嘘だったら??分かってるよね?」
見下す様な視線で問いかける日菜。その表情に洸夜の体は竦む。蛇に睨まれたカエルの様に。
「もちろん……」
頷いた洸夜は、ハンドルに掛けた手を強く握る。その傍ら、日菜が少し前に出たかと思うと、軽やかに身体を回しからの方へと振り返る。
「じゃあ、帰ろっか」
先程までの殺気を帯びた表情とは一転し、無邪気さを漂わせる表情で。
「ああ……」
洸夜は沈んだ気持ちのままそう答え、日菜と共に歩き出すのだった??
帰宅した洸夜は、夕食をとり自室へと篭っていた。椅子に座り周囲を一瞥した後、漸く小鳥遊から受け取った便箋を露わにする。
「……開けてみるか」
呟きながら封を切る洸夜。そして中身を取り出した瞬間、その手紙が横から伸ばされた手によってひったくられる。
「……何かしら、これ?」
「紗夜……?!」
洸夜が振り向いた先にいたのは、上の妹である紗夜であった。
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ