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序幕
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かお兄ちゃんと帰りたいなーと思って迎えに来ちゃった」
「家で待ってりゃいずれ帰ってくるのにか?」

 苦笑しつつ日菜の言葉に返答する洸夜。

「うん。早くお兄ちゃんに会いたかったから」

 満面の笑みでそう答える日菜。そんな無邪気な妹の姿に、洸夜の頬も緩むのであった。

「取り敢えず帰るか」
「うん」

 2人は、たわいも無い会話をしながら自宅へと向かう。そして家が近づいて来た頃、不意に日菜がこんなことを尋ねる。

「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「何か、隠してる事ない?」
「……なんでだ?」

 突然の問いかけに、洸夜は立ち止まり首を傾げる。それに合わせて、日菜も足を止める。

「お兄ちゃん、どこかよそよそしいもん」
「え、よそよそしい?」
「うん。それに??知らない子の匂いがする」

 日菜の言葉を聞いた途端、危険を告げるかのように洸夜の背中を悪寒が走る。

「私、分かるんだよ? 人の匂いとお兄ちゃんの匂いの違い」
「……俺から、その違う匂いがするってことか?」

 冷や汗を垂らす洸夜の傍らで、日菜はゆっくりと頷く。

「それで、お兄ちゃんが何かを隠そうとしている。これは、何かあるよね? 寧ろないっていう方が無理があるよね?」

 問い詰めてくる日菜。その瞳は、先程まであった無邪気さを失い、暗く冷徹なものへと成り果てていた。

「……あった」
「何が?」
「今日、一緒に日番やってた女子と黒板消すときぶつかった」

 答えた洸夜を日菜は見つめる。そして何かを納得したらしく1人で頷く。

「ふーん。お兄ちゃんがそういうならそんなんだろうね」
「……ああ。俺の不注意だ」
「今回はそれで信じるよ。もし嘘だったら??分かってるよね?」

 見下す様な視線で問いかける日菜。その表情に洸夜の体は竦む。蛇に睨まれたカエルの様に。

「もちろん……」

 頷いた洸夜は、ハンドルに掛けた手を強く握る。その傍ら、日菜が少し前に出たかと思うと、軽やかに身体を回しからの方へと振り返る。

「じゃあ、帰ろっか」

 先程までの殺気を帯びた表情とは一転し、無邪気さを漂わせる表情で。

「ああ……」

 洸夜は沈んだ気持ちのままそう答え、日菜と共に歩き出すのだった??





 帰宅した洸夜は、夕食をとり自室へと篭っていた。椅子に座り周囲を一瞥した後、漸く小鳥遊から受け取った便箋を露わにする。

「……開けてみるか」

 呟きながら封を切る洸夜。そして中身を取り出した瞬間、その手紙が横から伸ばされた手によってひったくられる。

「……何かしら、これ?」
「紗夜……?!」

 洸夜が振り向いた先にいたのは、上の妹である紗夜であった。


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