第二章
[8]前話
「何かいい様に扱ってるよ」
「あれしてこれしてだな」
「そんな感じで」
「お母さんみたいにだな」
「そうだよ」
息子は父に話した。
「そうしてるよ」
「そうだな、本当にあのままいったらな」
「お母さんみたいになるんだ」
「性格はな、まあ普段は優しかったらな」
母の様にというのだ。
「いいだろ」
「普段はだね」
「それならな」
こう息子に話した、そして二十年後。
すっかり奇麗に成長した美優は大学を卒業した後で就職して職場で知り合った同期と結婚したのだが。
その夫の安吾優しい顔立ちでおっとりしていそうな彼が潤一郎と実篤に三人で飲んでいる時に話した。
「僕には優しいんですがね」
「気が強いよね」
「はい、凄く」
潤一郎にビールを飲みつつ答えた。
「誰よりも、それで怒った時見たんですが」
「怖いね」
「頭に角が見えました」
鬼のそれがというのだ。
「リアルで、失礼な勧誘の電話にです」
「それは母親似んだよ」
実篤もビールを飲んでいる、そのうえでの言葉だった。
「あいつは子供の頃いつもお母さんといてね」
「お母さん子だったんですか」
「今でも尊敬しているから」
実の母をというのだ。
「凄く慕ってね」
「だからですか」
「性格そっくりになったんだよ」
「そうなんですね」
「気が強くて怒ると怖いな」
「悪いことしないですが」
「そうだよ、けれど普段は優しいんだね」
娘婿となった彼に問うた。
「そうだね」
「はい、僕には凄く」
「それで君はいいかな」
「いいと思います、家事もちゃんとしてくれますし」
「働きながらだね」
「凄くしっかりしています」
「それも母親似だから。それじゃあね」
彼にあらためて言った。
「娘を頼むよ」
「頼まれてでいいですか?」
「ならそれでいいよ」
「これからも仲良くしてやってね」
実篤だけでなく潤一郎も言った、見れば潤一郎は中年の時の父の姿になっていて実篤は白髪になっていた。
そのうえで今度は潤一郎の妻のことを話した、そちらは穏やかでこれといってなかった。話になるのはあくまで美優であった。
お母さんを見習って 完
2022・7・19
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ