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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
第百四十五話 M作戦
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「それで、いやはやチャンチャラ可笑しいわってレヴェルよ」
「どの様な感じで?」

「理想論ばかり書いてあるのよ。共和主義は“人民の人民による人民のための政治”とか“天は人は人の上に人を作らず人の下に人を作らず”とか、それなら何故、叛徒には金持ちが居るのかしら、大勢の貧乏人が居るのかしらね。完全な理想でしかない事を真面目に論じてるんだから、おとぎ話の方が未だ未だ現実的だわ」

テレーゼの比喩に参加者に笑いが起こる。
「なるほど、純粋培養の共和主義者にしてみれば、現在の叛徒共は理想を汚した者達に映るか」
フリードリヒ四世の鋭さがテレーゼの言いたいことを察したようだ。

「ええ、何れ時期が来たら、彼等を叛徒共の元へ亡命させます。更に前々から向こうの社会に溶け込んでいる草に社会的弱者を救済する政治団体を作らせ、団体員による反戦運動を起こさせます。恐らく亡命した連中は理想と現実のギャップから、その誘惑に勝てずに参加してくる者も多いでしょう。そうなれば、大きな社会運動になります」

「つまりは、帝国の不安分子を叛徒の不安分子に変えると言う訳じゃな」
「そんな感じですけどね。尤も叛徒の首魁共は自分達の手足として、憂国騎士団を筆頭とする暴力組織を持って居て、反戦活動などを叩き潰しているそうです。しかも官警がそれに荷担しているとかで、何処が民衆共和制なのやら、全く帝国より酷い状態ですね」

「そうなると、反戦活動をさせても無駄なのでは無いのでは?」
「ケスラーの疑念も確かですけど、その辺は良いんですよ。政治団体は隠れ蓑、実際はその影で社会的弱者集めて彼等を中心にM作戦を行うのが目的の一つですから」

「M作戦?」
「マネーのMです。つまり作成させている偽札を大量に社会的弱者などの同盟市民に配布し経済的な裏付けの無いディナールを大暴落させる訳です。コーヒー一杯飲むのにトランクいっぱいの紙幣が必要で、一片のパンを求める市民が大暴動を起こす。なんて素晴らしいのでしょう」

ニヤニヤと笑うテレーゼに皆がどん引きした。

「それに、帝国にもメリットがありますから」
「なんじゃ?」
「一に危険分子を追放できる。二に叛乱軍が攻めてこない。まあ自棄になって攻めてくるかも知れませんけど。三に叛徒の大混乱にあんな土地を征服してもどうにもならないと、帝国内に知らせることが出来る。まあ門閥貴族には判らないかもしれませんけどね」

「うむ、それが長期展望と言う訳か」
「はい、もう少しあるんですけどね。叛乱軍を誘き寄せて壊滅的打撃を加えるという作戦も」
「それは?」

「叛乱軍が今後487年までにイゼルローン要塞を攻略すれば、一気に叛乱軍、フェザーン、寄生虫状態の門閥貴族を潰す機会が訪れるのです」
テレーゼの言葉に今度こそ皆が押し黙る。

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