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イベリス
第五十九話 疑惑を自分でその十

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「小山さんもよ」
「止まらない場合もですか」
「あるわよ、その時どれだけ痛い苦しい辛い」
「そうしたことがあってもですか」
「それで心が折れることはない様にね」
「いけないですか」
「そうよ、そして嗤う人がいても」
 その失恋をというのだ。
「その人のことは考えないことよ」
「怨んだら駄目ですね」
「自分は怨まない様にしてね」
 そうしてというのだ。
「怨むことはね」
「したら駄目ですね」
「復讐鬼の末路は絶対に悪いものになるから」
 それ故にというのだ。
「何があってもよ」
「怨んだら駄目ですね」
「本当に人間怨んでね」
 そうしてというのだ。
「憎しみに心を支配されてね」
「復讐鬼になったら」
「その時はね」
 まさにというのだ。
「何度も言うけれど」
「末路は悪いですね」
「そうなるから」
 だからだというのだ。
「怨まないでね」
「怨まれない様にして」
「それと同時にね」
「そうしていきます」
 咲は真顔で答えた。
「絶対に、ただ恋愛は」
「縁がないっていうのね」
「そう思います、私には」
 副部長に笑って話した。
「まずです」
「そう言うけれどね」
「誰かを好きになったりしますか」
「酷い失恋をしてもね」
「さっきお話したみたいにですね」
「復讐鬼みたいになってね」
 そうなってとだ、副部長はまたこう話した。
「それで二度と誰も好きになるかってね」
「そう思ってもですか」
「誰かを好きになる時はね」
「あるんですね」
「そうよ、怨みを忘れない様になった人でもね」
 それでもというのだ。
「そうなったりするのよ」
「そうですか」
「人を好きになるのって理屈じゃないから」
「恋愛は」
「そう、好きになって愛情を持つ様になるのはね」
 そうなることはというのだ。
「理屈じゃないの」
「感情ですか」
「そう、恋愛にルールはないとも言うしね」
「それって不倫もよしになりません?」
「勿論不倫は駄目よ」
 これは論外だというのだ。
「碌な結末がないわよ」
「まあ不倫はそうですよね」
「離婚とか慰謝料とかね」
「家庭裁判所とかですね」
「物凄くゴタゴタしてね」
「嫌なことになりますね」
「それで報いを受けるから」
 だからだというのだ。
「それでよ」
「不倫は駄目ですね」
「相手がいるならもう諦める」
「そうしないと駄目ですか」
「そう、親戚にいたのよ」
「不倫した人が」
「家庭持ちの男の人とね」
 まさにというのだ。
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