第二十八章 わたしの名は、ヴァイス
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文句をいうカズミの口が、驚きに閉ざされていた。
自分の手、指先、身体を、見下ろしながら、驚きの表情で。
治奈も同様の仕草で、やはりびっくりした顔をしている。
彼女たちの反応も、無理はないだろう。
カズミと治奈、二人の全身が予期せず輝いていたのである。
それは真っ白に、それは眩しいほどに。
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「身体が、軽いけえね……」
「本当だ……」
治奈とカズミ、二人が驚きの表情で自らの身体を見下ろしていると、そこへ、黒服三人組の一人が、右手に光の剣を握り、振り上げ、襲いくる。
「正拳!」
どっしり腰を落としたカズミの拳が、飛び込んでくる黒服の顔面へと、めり込んでいた。
鼻っ柱を潰され、ぐらりよろめいた黒服へとカズミは、
「裏拳!」
腰を捻り肩を捻り、側頭部へと手の甲を叩き込んだ。流れるような追撃である。
「りゃあ!」
そして、後ろ回し蹴り。
黒服は、無防備な状態での胸への打撃に、たまらず吹っ飛んだ。
魔力の質や量の問題によりアサキほどの破壊力はないものの、遥かに綺麗かつ豪快な技の冴えであった。カズミはアサキにとって空手の師匠であり、当然ではあるのだろうが。
「押忍!」
残心、胸の前で構えた両拳を、脇へ下げた。
癖なのか、気合入れのためかは分からないが。
その隣では、
「おおおおおおりゃ!」
紫色の魔道着、治奈が雄叫び張り上げながら、槍を頭上で振り回している。
その回転に、黒服が二人、弾き飛ばされた。
アサキたち魔法使いのパワーアップに、形勢は完全に逆転である、かどうかは分からず終いだった。
「いまは様子見だ!」
負け惜しみなのか本心なのか黒衣装の少女はそう言葉を残し、四人は溶けるように姿を消してしまったからである。
星が一つもない、漆黒の空の下。
ふんわり黒衣装の少女も、三つ子のように同じ顔をした黒服三人の姿も既になく。
残るのは、アサキ、カズミ、治奈、そして白い衣装を着た少女の四人。
しんと静まり返った空間で、白衣装の少女は、漆黒の空を見上げている。
その身体は、微かに震えていた。
ぽたり。
地が雫に濡れた。
いつの間か、泣いていたのである。おだやかな笑みを浮かべているだけだった、白い衣装の少女が。
「なにを……泣いて、いるの?」
アサキが尋ねる。
ここでそれを聞いて、なにがどうなるというのだろうとも思ったが。でも幼い顔の少女が泣いているともなれば、誰だって理由くらい尋ねるだろう。
「うん」
白衣装の少女はそういったきり、黙って闇の空を見上げて泣き続けていた。
それから、どれ
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