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魔法使い×あさき☆彡
第二十八章 わたしの名は、ヴァイス
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のふんわりした袖から出ている真っ白に輝く右手が、すっとアサキの赤毛に包まれた頭部へと伸びる。

 だが、無意識、反射だろうか、アサキは迫るその手を横からぱしり払いのけていた。のみならず、もう片方の手に握る洋剣を目にも止まらない速度で黒衣装の少女へと叩き付けていた。

 黒衣装の少女の、左手にも輝きが生じ、剣の切っ先を受け止めていた。そしてそのまま、押し返そうとする、

 この力比べはどうなるかというところ、アサキは剣に固執せず簡単に手放していた。
 そして、自由になった身体をぶんと回したのである。
 後ろ回し蹴りだ。
 少女の胸を完全に捉え、その瞬間には、少女の身体は背後にあるビルの壁を砕いてめり込んでいた。

 めり込んだその呻きすら上がらぬうちに、アサキは大きく前へ跳躍し、少女へと身体を突っ込ませながら、真っ白に輝く拳を少女へと突き出した。
 大爆発が起き、爆炎にアサキと黒衣装の少女はまったく見えなくなった。
 ばらばらりと、砕かれたビルの欠片が落ちる中、煙に覆われた視界がすうっと晴れていくと、そこには毅然とした表情でしっかり地に立っているアサキと、ふらりよろめいている黒衣装の少女の姿があった。

 ふんわりした黒い衣装は、この爆発にすっかりボロボロになっていた。焦げ、破れ、ところどころ肌が露出している。顔や指先と同じ、真っ白な肌だ。
 髪の毛が黒く、着ているものも黒づくめであるため、対比に病的なまで真っ白に見える。

 ここまでずっと上からな態度であった黒衣装の少女は、ようやくにして悔しそうに呻き、驚きにまぶたを震わせた。
 目の前に立つ、赤毛の少女を睨みながら、ぎり、と歯を軋らせた。

 そんな彼女を見ながら、アサキは、

「あなたには、なんにも恨みはない。けれど……」

 無意識に繰り出していた技の数々に自ら驚きながらも、冷静に言葉を発していた。
 それは、いいわけの言葉であった。
 反撃に叩き伏せてしまった罪悪感に、いいわけをしているのである。
 少し前まで自分の方こそが圧倒され、殺され掛けていたというのに。
 理屈では分かってはいる。こちらは非も分からず襲われているのだ。ならば、なりふり構わず自分たちを守るのは当然だ、ということは。
 なのに叩きのめして罪悪感。
 そうした、お人好しのみで細胞構成されているのが、まあアサキなのだろう。

 さて、この一対一の戦闘においては、アサキが勝利目前で手を止めてしまっていたが、他の者たち六人の戦いはまだ続いていおり、情勢に変化も起きていた。

「あなたたちも、自分の身くらいは守って下さい」

 白衣装の少女が、すっすっとカズミと治奈の間を通り抜けながら、白く輝く右手で二人の身体を撫でたのである。

「な、なにしや……」

 
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