第二十八章 わたしの名は、ヴァイス
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、後ろへと跳ね飛んでそれぞれ尻から地に転がっていた。
「自分で、自分は倒せないからね。……だから、どいていろ」
ゆっくりと立ち上がりながらの、黒い少女の言葉。
触れた瞬間に反発し合ったことを、いっているのであろう。それがなにを意味することであるかは、アサキには分からないが。
「どかないよ。わたしは、まだ仲間なんだと、思っているから」
ふんわり白衣装の少女も立ち上がって、またアサキを背負って両腕を大きく広げた。
「これまでただの一度も、お前を仲間や味方だなどと、思ったことはないけどな」
「わたしは、ずっとそうであると思っていた」
「どうでもいいよ」
白と黒、二人の少女は言葉かわしながらお互いに接近し、拳を打ち付け合った。
正確には、黒い衣装の少女が執拗にアサキを狙おうとし、白い衣装の少女が身や拳で進路を塞いでアサキを守ったのである。
二人の拳が、反発に大きく跳ね上がっていた。それぞれ、ぶうんと回る拳に身体が持っていかれて、ふらりぐらりとよろけた。
その様子を見ながら、白い少女の背後で守られながら、アサキは思っていた。
どうして、この子たちはお互いに触れ合うことが出来ないのだろうか。
何故、わたしたちはこうして生命を狙われているのだろうか。
そして、この白い服の女の子は、何故わたしたちを助けてくれるのだろう。
「たち、ではありません。彼女の狙いは、あなたですよ。令堂和咲さん」
一瞬の間に三度、アサキはびっくりした。
目の前にいたはずの白い衣装の少女の声が、すぐ背後から聞こえたこと。
少女が自分の名前を知っていたこと。
少女に自分の考えが読み取られていたこと。
「出来ることなら、守ってあげたいと思うのです、わたしは。でも、この通り、自分で自分を攻撃は出来ない。だから……」
白衣装の少女の、小さくもはっきりとした声。
ぞくり
アサキの全身に、鳥肌が立っていた。
背筋を、なにかが突き抜けていた。
白い衣装の少女が、撫でたのである。
真っ白に輝く右手がアサキの背後を、頭から腰まで撫で下ろしたのである。
輝きがすうっと染み移り、アサキの全身が真っ白に包まれていた。
少女の右手と同じ色、ぼおっとした真っ白な光に。
身体だけでなく、手にしている洋剣までもが。
「余計なことを」
黒衣装の少女が、つまらなさそうに口元を歪めた。
「どうであれ負ける気はしないがな。しかし、その力を御せるようになられると、ほんの少しだけ厄介になる。……ならばその前に!」
言葉の終わるか終わらぬかのうちである。黒衣装の少女が、アサキの視界を完全に塞いでいた。
黒衣装
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