第二十八章 わたしの名は、ヴァイス
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て直し再びアサキへと挟撃しようと動くが、その動きがなんだか奇妙であった。
いや、動きが奇妙というよりは、剣を振り上げ掛けた中途半端な姿勢のままで動いていないことが奇妙であった。
アサキの魔法によるものだ。
赤毛の少女の足元を中心に、半径三メートルほどの青白い五芒星魔法陣が広がっている。
黒服二人もその中におり、魔法陣上に乗せられた呪縛魔法により動きを封じられていたのである。
呪縛陣。
アサキが、地味に得意とする魔法である。
それを非詠唱で発動させたのだ。
「行くぞお! 超魔法っ!」
ぐ、と腰を落とすアサキの、右手の洋剣が白く輝いた。
だが、剣を振り上げ掛けた瞬間、ふっ、と足元の輝きが、魔法陣が、消失していた。
呪縛陣が消えて自由になった黒服二人は素早く跳躍し、アサキから離れた。
「アサキちゃん、下っ!」
治奈の慌てた叫び声。
「え」
アサキの足元、先ほどまでアサキ自身が作った青く輝く呪縛陣のあった場所が、今度は真っ白な円形に輝いていた。
模様のない、単なる真っ白な眩い輝き。
それは魔法なのか、別の力なのか。
そこから逃れようとして、アサキの目が驚きに見開かれた。
「動けない……」
靴の裏が、地面に張られた白い輝きに、ぴたりと張り付いてしまっていた。
動くことが、出来ない。
足の裏だけではなく、全身が麻痺してしまっていた。
仕掛けた呪縛を破られたどころか、反対に自身が呪縛されてしまった。
焦りもがくアサキの目の前に、黒衣装の少女がにんまり顔で立っていた。
敵四人の中で、唯一感情のある表情を見せる彼女。
さらには唯一、圧倒的な戦闘力を持っており、この呪縛返しもおそらく彼女の技であろう。
く、呻き声を上げてアサキはなおもがき続けるが、下半身どころか手の指先さえ動かすことが出来ない。
動けなかったが、そんな中でもアサキは、冷静に状況を観察していた。
この呪縛陣に似た能力であるが、魔力はまったく感じないということを。
ならば一体どのような理によって自分が拘束を受けているのか、そこまでは皆目見当も付かなかったが。
前に立つ、ゆったり黒衣装の少女の、右腕がぼおっと白く輝いた。
そして前へと歩み出す。
呪縛を破ろうともがいている、アサキへと。
白く輝く右手をゆっくりと開き、腕をゆっくりと上げ、手のひらをアサキの顔へと近付けていく。
おそらく魔法とは異なる系統技術である、この白く輝くエネルギー。それは、破壊、催眠、睡眠、老い、どのような効果を与えるものであるのかは分からない。だが、ここまでのやりとりを考えるならば、受けて有益であることはまず考えられないだろう。
体内に様々と呪文を
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