第二十八章 わたしの名は、ヴァイス
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も、誰だよお前は!」
「質問は、一つづつにしていただけないでしょうか。同時に返答も可能ですが、あなたの受容量では追い付かないでしょう」
「ジュヨ……よく分かんねえけど、とてつもなくバカにされた気がするうう!」
「ま、まあ抑えて、カズミちゃへぶっ!」
ガチッ、
という骨を打ち合う音と共にアサキの顔がひしゃげていた。
なだめようと近寄ったはよいが、怒りの裏拳を頬に叩き込まれてしまったのである。
「酷いよお」
アサキは頬を押さえて涙目である。
「うるせえ! 面白フェイスを近付けるからだ! このアホ毛!」
と、まなじり釣り上げたままカズミは、ばっちいもの触ったみたく自分の右拳をスカートの裾で拭いた。
拭きながら、視線を白い衣装の少女へと戻す。
「じゃあ、まず最初の質問は、お前の名前だ。……アサキの名前を呼んでたってことは、あたしらのこと知ってるようだけど、こっちは知らないんじゃあ不公平だからな」
「わたしに名前はありません」
「嘘つけや!」
淡々答える少女の語尾に、びしっとカズミが被せるが、
「事実です。何故なら名を持つ必要がないからです」
カズミの語尾に、少女が被せ返した。
「どういうこと、必要がないって……」
アサキが尋ねる。
まだ鉄拳の痛みに涙目で頬をさすりながら。
「はい。ここには、わたしと、先ほどの彼女たちしかいないからです」
「え……」
どういう、こと?
アサキには、意味が分からなかった。
いや、言葉の意味は理解出来る。
でも、その内容を信じることが出来なかった。
なにかの任務とか、もしくは天変地異などで、本当にここに人がいなくなってしまったとしても、だから残った者には名前がないでは理屈が通らない。
必要ないから呼び合わない、というならば分かるが。
「ただ、ついにというべきか、招かれざる客も訪れてしまいましたけどね」
「至垂とかな」
カズミはあぐらかいたまま腕を組んで、うんうん頷いた。
ブロンド髪の少女は、ベッドの上のカズミを、そして視線を動かして治奈を見ると、小さくはっきりした声を出した。
「あなたたち二人もです」
「はあああ?」
一瞬で、脳だか神経回路だかの導火線に着火したカズミは、あぐらかいたまま自分の膝小僧をそれぞれバシリと叩いた。
「好きでこんな辛気臭えとこにいるわけじゃねえよ! どこなんだよここ。それと、とっとと名前をいえよ!」
「先ほども申し上げましたが、名前は、ありません」
「ないわけないですう」
「本当に、ないのです。必要がないから、と理由も申し上げているでしょう」
「あたしらみたいな他人と、こうして会った時に困るだろうが」
「いえ、わたし
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