第71話 アスベルン星系遭遇戦 その2
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あったが、今度は二五〇〇隻弱が横隊一列でこちらとがっぷり四つになって応射してくる。不幸にもその光を浴びた、地上で見た時はあんなにも巨大であった宇宙巡航艦も一瞬の光点となって、宇宙の闇に消えていく。最初は片手の指で数えられたそれは、すぐに端末画面上の数字で解釈するしかなくなる。
「ジュニア!」
「ハッ!」
「頭の一五分を貴官にくれてやる。各敵部隊の強弱・練度を推定して、儂に報告せよ」
「承知しました!」
恐らく士官学校でもやったことのない速さで起立、しなくてもよいといわれた敬礼を〇.五秒でこなし、再着席して端末に向かう。敵の戦力は数字だ。これはレーダーと重力波で殆ど詳細に把握できる。艦の大小も同様だ。既に情報分析システムが人間の数億倍の速度で検算し、ほぼリアルタイムでの配置をデータ化してくれる。
戦列はどうか。これも開戦前に確認した通り戦理に則している。戦力も五〇〇隻、一五〇〇隻、五〇〇隻と立方横隊陣の基本とした戦力配置をしている。これだけでは『敵部隊は常識的に戦う』という事しかわからない。
爺様の指示は『敵の強弱と練度を推定せよ』だ。それは砲撃精度・同密度・水雷戦闘能力・戦列運動能力などの各部隊に対する能力評価だ。つまりそれは士官学校を卒業して最初に配属された場所で、フィッシャー中佐に叩き込まれた『査閲』評価そのものだ。
こちらの部隊は烏合の衆である。しかし敵もまた同じ。部隊単位での戦闘能力はそれなりにあっても、集団としての能力はガッチリと艦隊戦列訓練を行う正規艦隊とは比べ物にならない。可動標的としてはややイージーと見るべきだろう。そして機動能力はこちらの砲撃に対する回避……被害でおおよそ推定できる。
爺様は一五分という時間をくれたが、この時間は味方の被害と同価値だ。長くなれば長くなるほど、失われる艦も人も多くなる。失ったら二度と戻らない人と艦だ。
恐らくエル=ファシルの時と同じか、それ以上の速度で俺は指と眼球を動かして、七分二〇秒後。帝国軍の平参謀になったつもりで、爺様の右脇、ファイフェルの隣に歩み寄った。
「早かったな。どうじゃ?」
「敵右翼部隊はほぼ精鋭の一集団で、中央は四つの部隊の混合。左翼は二部隊の混合と推定できます」
「その理由を、説明できるかね?」
爺様の向こうに立つモンシャルマン参謀長が、いつになく鋭い視線で俺を射抜くが、俺は勿論と返した。
まず敵の右翼。すなわちこちらの左翼(第三五一独立機動部隊五六六隻)と対峙している部隊の行動には明確な統一性がある。僅か三分ではあったが、五〇〇隻の部隊が二五〇隻程度の二集団に分かれ、それが交互に前進と後退を繰り返しながら、砲火を浴びせている。
これが左右に分かれての前後運動と言うのなら運動として難しいわけではない
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