暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission5 ムネモシュネ
(1) クランスピア社正面玄関前
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るって契約。写真、現像から返ってきたから渡したい」
『なるほど……正史に戻ったら連絡する。場所と時間はその時に』
「分かった。デート、楽しみにしてる」

 ユティは電話を切った。メール画面を開いて、分史世界の座標と、ルドガーと同行するメンバーの概要を打ち、ユリウスのGHSに送信した。

(楽しみだよ。とーさまと街で訓練以外で二人きりになるの、初めてなんだもん)

 ユティはGHSのスピーカー部分に口づけた。
 早く任務を終わらせてユリウスに会いたい。






 クランスピア社前の正面玄関に戻ると、主立ったメンバーは全員揃っていた。時間には間に合ったがユティがビリだったらしい。

 どうせだから、とユティは集団に気づかれる前に、全員が集合しておのおの好きに過ごしている写真を一枚撮った。


「ただいま。ワタシが最後みたいね」

 ルドガーの横に並んで声をかける。

「ああ。いい写真撮れたか?」
「ばっちぐう」

 ユティは指で輪を作ってOKサイン。

「って、そこは装備ちゃんと整えてきたか? って聞く場面じゃないかな」
「してないのか?」
「したよ。いの一番に」
「なら聞くまでもないだろ。撮影に入る前に用事は片付けるからな、ユティは」

 ――これは、一定の範囲での信用はルドガーから得られたと思っていいのだろうか。




「あ、ユティおかえりー。買い物おつかレイア〜」
「おつかれいあ〜。レイアこそ非番に引っ張り出してごめん」
「すっかり仲良しさんですな。レイアさんもユティさんも」
「ローエン!」
「レイアがいい子だからだよ」

 この二人は、レイア・ロランドとローエン・J・イルベルト。それぞれマクスバードとドヴォールで加わった仲間だ。

 レイアは「デイリートリグラフ」の新米記者。生粋のリーゼ・マクシア人だが、独立心と克己心旺盛な彼女は、単身エレンピオスに移り住み、就職まで決めたのだとか。

 ローエンは何とリーゼ・マクシアの宰相である。一般人感覚でも雲の上の人、ユティの感覚からすれば生きた伝説。もちろん、彼が随行していた「とある遊び人の男」ともども、ロイヤルショットに納めさせていただいたユティである。

「これで全員そろったねっ」
「こうして見るとけっこー大所帯だなー」

 ユティも数えてみる。計8人。確かに多い。今日のルドガーの初任務の通達を受けて、ジュードとアルヴィンが説明の場にいなかった仲間にも声をかけたからだ。

(世界の危機って聞いたら集まってくるなんて、RPGみたい)

「困ってる時に駆けつける友達が多いのはいいことだよ、アルヴィン。そんじゃさっそく分史世界とやらに出発!」
「何でレイアが仕切るのさ……ルドガー、準備は?」
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