第七十九話 地下神殿の死闘・前編
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アンリエッタは、自分の気持ちをマクシミリアンにぶつけた。
「……マクシミリアンさま」
「……分かってるよカトレア」
阿吽の呼吸か、マクシミリアンとカトレアは、一言言葉を交わしただけでお互いの意思を汲み取った。
「アンリエッタ。他の人の迷惑にならないようにしていなさい」
「ありがとうお兄様!」
「救うといっても、具体的にどうするか見当も付かないし、楽にしてやった方が救われる場合もあるから、その辺は覚悟していなさい」
「……はい!」
アンリエッタが嬉しそうに返事をし、その後ろでは参謀Aがまたも某絵画の叫び声の様な格好をしていた。
だがそうなると収まらない少女が独り居た。言うまでも無くルイズ・フランソワーズの事だ。
「待ってお義兄様、私も残るわ!」
「ルイズもか!?」
「私はトリステイン貴族です。貴族が王家の者や国民を置いて逃げるわけには行きません!」
「いやしかしだな……」
「私は立派な貴族になりたいんです!」
説得しようとするマクシミリアンに、ルイズはマクシミリアンの目をジッと見て訴えた。
「……」
「……」
一瞬の沈黙が場を支配した。
「……ふぅ」
「マクシミリアンさま?」
沈黙を破るようにマクシミリアンが一息吐いた。
「負けたよ、ルイズはアンリエッタと一緒に居なさい、そして何が何でもアンリエッタを守れ、いいな?」
「ありがとうお義兄様!」
ルイズは、アンリエッタの所へ行き、手を取り合って喜び合った。
「何だなカトレア。この頑固な所は、ヴァリエール家の特性か?」
「うふふ、それじゃわたしにも頑固な所があるんですか?」
「君によく似ているよ」
「あらあら」
戦場とは思えない和やかな雰囲気が辺りを包んだ。
「……」
笑いあう国王夫妻の光景を、アニエスはなんとも言えない顔で見ていたが、その顔を見たものは誰もいなかった。
結局、ルイズとアンリエッタは、護衛のアニエスから離れない事の条件付きで同行を許された。
……
殿に残ったデヴィットらの分隊は、分隊長のデヴィットの魔法のお陰でスライムの侵攻を塞き止める事に、辛うじてだが成功していた。
デヴィットは精神切れギリギリの状態で、『ファイア・ボール』のスペルを唱える。
「分隊長、魔法はまだ使えるんですか? 無理はしないほうが……」
「ここで無理をしなければ、皆死んでしまうぞ」
ヒューゴがデヴィットを労わるが、当のデヴィットはそんな事お構い無しだった。
『ファイア・ボール!』
デヴィットの杖から放たれた火球がスライムを溶かし、スライムは後退を始めた。
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