第五十八話 東京の紫陽花その九
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「これは非常によくないです」
「塔ですか」
「このカードのことはもうご存知ですね」
「破滅ですね」
「そうした意味を持つカードなので」
「今日何かあるんですね」
「お一人だと。ですから送らせて頂いて宜しいでしょうか」
見れば速水は真顔になっていた、その顔で咲に話すのだった。
「安全の為に」
「お願いします、そのカードを見ますと」
この仕事をしてすぐにタロットカード大アルカナの示すものは全て覚えた、その中に塔があることは言うまでもない。
「大変なことが起こりそうなので」
「自宅まで送らせて頂きます」
「家まで、ですか」
「はい、こちらから」
シブヤの109からというのだ、店のある。
「そうさせて頂きます」
「そうしてくれますか」
「はい、では戸締りをしたら」
「一緒にですね」
「帰りましょう」
「わかりました」
咲は速水の申し出に笑顔で応えた、そうしてだった。
彼と共に店を出て渋谷駅から電車に乗り自宅の最寄り駅まで一緒にいてだった。
駅を降りても自宅まで送ってもらった、そして自宅の玄関の前で速水に言われた。
「何もなかったですね」
「はい、よかったです」
「どうも電車の中に胡散臭い中年の男の人がいました」
「そうだったんですか」
「マスクをしていましたがおそらく」
咲にその右目を鋭くさせて話した。
「都議会議員の戸室鉄也ですね」
「あのいつも汚職や女性問題を起こしている」
「はい、民主立憲党の」
「物凄く評判の悪い人ですね」
「小山さんをずっといやらしい目で見ていました」
電車の中でそうしていたというのだ。
「私達は立っていて彼もでしたが」
「まさか」
「はい、痴漢でもしようとしていたのでしょう」
「痴漢ですか」
「そこからどうにかして脅迫してです」
そうしてというのだ。
「小山さんをご自身のものにするつもりだったかも知れません」
「えっ、あんな人から」
「そうかも知れません、そうでなくともです」
「痴漢に遭っていましたか」
「塔のカードは最悪なので」
「破滅ですね」
「痴漢位と言ってもいい状況になっていたかも知れないです」
こう言うのだった。
「これは」
「危ないところだったんですね」
「まことに。ですが」
それがというのだ。
「私が傍にいたので」
「あの人も近寄って来なかったんですね」
「そうだったかと、ですがこれでです」
「難を逃れられましたね」
「そうかと、ただ」
ここで速水はまたカードを出した、今度のカードは月の逆だった。速水は咲にそのカードを見せつつ話した。
「これから多少でも不愉快な出来事がある様ですね」
「不愉快ですか」
「そのことをお気をつけ下さい」
こう言うのだた。
「どうか」
「
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