第二章「クルセイド編」
第十九話「少年の強さ」
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消え行く命だと理解しているのだろうか。そして霞む意識の中で、リオンに対する謝罪の言葉を選んでいるのだろうか。
「ふざけるなよ……」
のどが焼けるのももう気にならなかった。リオンは自分の口で言葉を紡いだ。
「謝るのはそんな途切れ途切れの言葉でするものじゃないってことを知らないのかお前は」
「(リオン、お前)」
「邪魔だって言うなら僕を殺して行けエレギオ。元々お前に助けられた命だ。お前にくれてやる」
「(テメェ! ふざけんなよ!)」
「なんとでも言え。コイツをこの火の中置いて行くなんて事はとてもできない」
エレギオは眼を瞑ってやれやれ、とでも言うように首を振った。そして燃え盛る炎を見る。
「(……念話で喋れ。お前が足掻く時間を少しは稼いでやる。
その上でその娘諸共くたばりてぇって言うなら好きにしろ)」
ドラゴンソウルに何か鉄の筒のようなものをセットした。その上で炎に向かって銃口を向ける。
「(無駄かも知れねえが一応言っとく。時間は十分が限界だ。それ以上は悪いが降りさせて貰うぜ)」
「(そうか)」
だがエレギオは確信した。リオンは死ぬ気ではない。フェイトを助けるつもりだ。この燃え盛る森の中で一人の少女を救うつもりだ。リオンの見せた眼。アレは希望を捨てていない眼。さらに言うなら不可能だとかそんな理屈などどうでも良いと思っている者の目、例えるなら英雄の目とでも言うべきか――――――
だが故にエレギオは確信する。リオンは死ぬ。必ず死んでしまう。
僅かな日々であったがエレギオはリオンのその隠し様もない本質を見抜いていた。リオンは誰よりも英雄ではない。そしてその本質がある限り英雄には彼はなれない。
(馬鹿か俺は!? 不吉な事考えるんじゃねえ!!)
エレギオは自分の頭をカチ割ってやりたい衝動に駆られた。彼は悪党だ。だが人の幸せを願えないクズではない。エレギオだってリオンがどれ程にフェイトのことを思っているのか知っている。アルフという使い魔の懐き方からフェイトが優しい娘だと言うのもわかる。そしてそうでなかったのだとしてもやはり九歳の女の子をこんな風に嬲り殺す最悪の結末は間違っている。
(ハハッ、そうだよ。大体俺がアイツを、リオンをここまで連れてきたんじゃねえか。
だったら俺があいつ等を信じないでどうするよ!?)
だとしたらエレギオがすべき事は一つ。
ドラゴンソウルを構え炎の海へ飛び込んだ。
−−−−−−−−
リオンは術を止めない。
血が止まらない。どれほどの晶力を篭めても元の術式である『ヒール』自体が治癒魔法としては中位の物。出力が余りに足りない。フェイトの血も止まらない。呼吸も異常が出始める。火傷による痛みもあるのか
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