第二章「クルセイド編」
第十九話「少年の強さ」
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さを知るリオンは胸に宿った激情を隠すこともできなかったのか。
或いはそれ程にリオンは怒っていた。
(チクショウ…………!)
何故だ。なぜこれほどの暴虐が許される。フェイトは確かに指名手配された悪人となってしまうのかも知れない。だがたったそれだけの理由でこれ程に一人の、まだ九歳の少女を蹂躙する事が許されると言うのか。リオンは感じる。もしそれが真実だと言うのならこの世界を到底許す事はできないと。
「坊ちゃん」
無言で頷いてリオンはシャルティエと共に手早く回復の晶術をくみ上げた。唯一使える回復晶術『ヒール』。だが足りない。そもそも回復専門では無いリオンの晶術ではこの傷を治すのに到底足りない。だがこの世界にリオンやもう一人のまるで馬鹿みたいに突っ込んでいく前衛を瞬時に癒してくれたあの女は居ない。例え世界が同じであったとしてもリオンは自分から仲間を捨てたのだ。あの女も当然居ない。リオンに仲間は居ない。
……………………………………………………………………………………それは違う。リオンには仲間が居る。目の前に。
そして今また手放そうとしているのだ。
それに漸く思い至ったときリオンは愕然とした。
リオンの肩をエレギオは掴む。
「(もう止めろ……もう無理だ。エドがいても助けられねえ)」
「(放せ)」
「(わかってるだろ!? これはもう人が失っていい血の量じゃないってことは!? この娘は……もう)」
解っているのだ。リオンにエレギオの言う事は。否、彼以上に理解していると言ってもいい。リオンは戦闘の達人だ。人間がどんな怪我をすれば死ぬのか。どれだけ血を流せば死ぬか。剣士として、それにのっとって敵兵を殺す訓練もあった。エレギオの言うとおりフェイトはもう助からない。今のフェイトの状態を呼ぶなら死に体だ。
だが――――――
「り、オン、さん?」
うっすらと死に行くフェイトは眼を開いた。
「(フェイト!? 聞こえるのか!?)」
「(落ち着けリオン! これは寝言みたいなもんだ! わかってるだろ!?)」
そんなエレギオの声には耳も貸さずにリオンは自分が血に濡れるのも構わず傷つけない様にフェイトを抱き寄せた。
「(フェイト! おい、しっかりしろ!)」
眼は片方潰れている。もう片方だって閉じている。なのに確かにその手はリオンに向かって伸びた。
「ごめ、なさい」
「(なにを……お前……)」
「わた、怖かった。おか、さん。いないの、みと、ると。ほん、うに。居な、なっちゃいそ、で」
その声は途切れ途切れで。口に耳を寄せてやらないと聞こえないほど小さなもの。
フェイトは果たして時分の体の状況を理解しているのだろうか。
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