第二章「クルセイド編」
第十九話「少年の強さ」
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はその能力に自信が有った様だが存外に使えないな)」
「(まあ聞けよ、俺の天上眼の探知から逃れる方法が一つだけ存在するんだ)」
「(…………何だそれは?)」
「(単純な話さ……
見ている相手が死ねば、な。流石の俺でも死人は追えねえよ)」
流石のリオンも直ぐにそれを受け止めることはできなかった。
「(死ねば……? 貴様それは)」
「(さあな……だが何かがあったのは間違いねえ。だがそれは後でにしようや。もう直ぐ目的地だし)」
少なくともフェイトの反応が切れた訳ではないと言外にそう告げる。エレギオの探知能力を持ってすれば魔力の持ち主も特定できるのだ。魔力とは指紋のような面も持っており波調に僅かだが個人の変えられない差がある。……勿論指紋と言うからには一度その本人の魔力を見なくてはいけないし、その波調の差が分かるのは次元世界中探してもエレギオの天上眼以外には存在しないのだが。
だがリオンはその言葉と状況に確かに嫌なものを感じ始めていた。理屈では説明できない、剣士ではなく人としての本能が何かをリオンに訴えていた。
果たしてエレギオの言葉通り直ぐにリオンにとって見慣れた少女の姿が眼に飛び込んできた。フェイトだ。リオンは彼女を見て……その表情を凍りつかせた。
それは確かにフェイトだった。黒いバリアジャケットに身を包み、長い金色の髪をツインテールにした彼も良く知る女の子だった。付き合いはまだ短いが共にジュエルシードを集め大魔道士とさえ言われる女とも戦ってついさっき喧嘩したばかりの女の子の筈だった。なのにリオンは喜ぶこともできなかった。
フェイトは血塗れで転がっていた。
バルディッシュは完全に砕かれ、バリアジャケットは所々裂けていて、そこからは血が滝のように溢れていた。
腕が片方人間ではありえぬ方向で曲がっていた。
足には魔力刃が一本突き刺さっていた。
眼が片方潰れていた。
体の至るところが見るのも痛々しいほどの火傷で覆われていた。
たった一時間。それがリオンがフェイトと喧嘩してからたった時間だ。リオンがフェイトから放れた時間だ。
だがたった一時間で、リオンの知るフェイトは変わり果てた姿となってここに居る。
それはフェイトがどれ程世界から疎まれる存在となったかを示す事だった。
「(リオン気持ちはわかる。だがここで叫んだりすればどうなるかわかるよな)」
思わずリオンは顔を抑えた。エレギオの眼にはリオンが叫びだしそうな顔に見えたのだろうか。エレギオの顔がこんなに煤塗れで表情が良くわからないのに、リオンも同じ場所を通ってきたから同じく顔は煤塗れなはずなのにそれでもリオンは、一流の戦士として自分を律せない事の恐ろし
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