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戦姫絶唱シンフォギアGX〜騎士と学士と伴装者〜
第20節「四天の四騎士─アルカナイツ─」
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る事など不可能です。たとえマスターのお師匠様が相手でも、そしてお師匠様に仕える貴方が相手だとしても」

携えた大剣の切っ先をシルヴァに向け、スカートの裾を掴むファラ。
相対するシルヴァも木製のステッキを構える。

彼の表情は、少し憂いを帯びているように見えた。

「本当に、キャロルを止める気は無いんですね。その復讐の矛先が、縁もゆかりも無い無辜の人々だったとしても」
「いいえ。マスターはその無辜の民にこそ、その復讐の念を向けられるのです」
「そうですか……。物別れとは残念だ。交渉決裂、私の苦手な言葉です」
「ええ、本当に残念。でも違うマスターに仕える者同士である以上は、こうする他ありませんわよね?」
「ええ、仕方ありません。本気で、しかし紳士的に、貴女を止めることに致しましょう」

そう言って再び顔を向けたシルヴァは、口元を真一文字に結び、そこから静かに微笑みを浮かべる。

おそらく二度と無いであろう、本気の手合わせ。どちらかが散るまで終わらない、死の舞踏へのエスコート。

トネリコの枝より作られたステッキを握り、シルヴァは懐から1枚のコインを取り出す。

「このコインが地面に落ちた時が合図です」
「構いませんわ。……落ちる直前に先手を取る、なんて卑怯な真似をなさったら許しませんわよ」
「無論。礼節が人を作る(Manners Maketh Man)、私の好きな言葉です」

そして、親指に乗せられたコインは、キィィィンと波紋のように音を拡げながら弾かれた。

「それではファラさん……Shall we dance?」

コインが地面に落ちた直後、2つの旋風(かぜ)が空を裂いた。

ff

「へぇ……ガリィちゃんの相手はあなたなのね」
「……」

ガリィの前に立ちはだかったオートスコアラー、サンディはとても物静かだった。
白いシャツに赤のベスト、燃えるような赤い髪で右目を隠したオートスコアラー。
両手には真っ黒な革手袋を付けている。

「だんまりしちゃって、怖気付いてるのかしら?起動前のミカちゃんを破壊(ころ)せない甘ちゃんですもんね〜」

ガリィの言葉に、サンディの肩が一瞬揺れる。
あの日、サンディは起動前の戦闘特化型オートスコアラーを破壊するよう指示されていた。

サンディ自身も、その使命の重要性は理解していた。
彼女が起動した場合、キャロル陣営の戦力は大幅に拡大するのが目に見えていた。

だが、そのオートスコアラーを前にした時、サンディは躊躇った。
標的を目の前にしていながら、彼はその手を下ろしたのだ。

その時の自分自身を思い返し、逡巡しながら、サンディはガリィの言葉に応じる。

「……オレ、あの子、壊したくない。あの子、まだ、うまれたばかり」

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