第121話『雨は上がって』
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ろ。お前が嘘言ってるとも思えねぇし」
「暁君……!」
あの伸太郎の信頼を得ていることに感動を覚えつつ、予想以上にあっさりとした態度に拍子抜けした。もうちょっと驚いて欲しかった気もする。
「……あれ、そういえば部長たちは?」
ここで、部屋に自分と伸太郎以外のメンバーがいないことに気づく。少なくとも、同部屋の終夜はいてもおかしくないはずだが。
「今、全チームの代表者が集められて、スサノオについて緊急会議してるんだ。部長もそこに出てる」
「会議?」
「スサノオついての情報収集とか対策とか、そんなとこだろ」
運営側から見ればテロリストに襲撃された訳だから、そういった緊急会議が開かれるのも当然と言えよう。
新魔術師云々の話も行なっているのだろうか。詳しくは後で終夜に訊いてみるとしよう。
「ま、相当イレギュラーな事態だぜ。何せ魔導祭関係者は、安全が確認されるまで全員ホテルで待機するように言われてるんだからな」
「え、それって今日は家に帰れないってこと?」
「かもしれねぇな」
これは困った事態になった。晴登は家族に魔導祭遠征のことをただ「部活の合宿」としか伝えていない。だから期間が突然1日延びてしまう状況は違和感がある。どうにか誤魔化す方法を考えないと。
「聞きたいことはこれで終わりか?」
「うーんそうかな。教えてくれてありがとう」
「気にすんな。……俺は別に何もしてねぇから」
そう零した伸太郎の表情には翳りが見られた。晴登や終夜たちと比べて、先の戦いであまり活躍できなかったことを悔いているのだろうか。
「そんなことないよ。暁君だって頑張ってたじゃん」
「お前ほどじゃねぇよ。俺には部長や副部長みたいな強さもお前みたいな勇気もねぇ。ただ後ろで言われた通りに動いてただけのヘタレだよ」
「っ……」
伸太郎の想像以上の卑屈っぷりに、フォローの言葉に詰まりそうになる。しかし彼は目眩しだったり治癒だったりと、サポートとしては充分な仕事を果たしていた。そんなに自分を卑下することはないと思う。
「……暁君がいなかったら、俺たちは本戦に出れてないよ」
「あ、あれはたまたま俺の得意分野だっただけで……。つか、今その話はしてな──」
「暁君がいて良かったって言ってるんだよ。だから、そんなに自分のことを悪く言わないで」
「……っ!」
これは晴登の本心からの言葉だ。伸太郎は役立たずやヘタレだなんてことはない。だって襲撃があった時、彼はすぐに状況を把握できていたし、自分の役目が何かもわかっていた。世の中には『適材適所』という言葉がある。それを体現できていた時点で伸太郎は凄いし、強いのだ。
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