第121話『雨は上がって』
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気分が良くなってるのかと思いきや、伸太郎の鋭い視線が晴登を射る。心当たりがあるだけに、目を合わせたくない。
「怒ってるっつーか呆れてんだよ。普通あそこで突っ込むかよ。……でも、結果的には助かったから、礼は言っとく。やっぱすげーよお前」
「あ、ありがとう」
説教が飛んでくるかと思いきや、そこまでには至らず、むしろ褒められてしまった。
結果的には、晴登が立ち塞がったおかげで雨男が疲弊した訳だから、確かにお手柄だったかもしれない。戦闘には負けたからあまり釈然としないが……。
「雨男……凄く強かった」
「だな。アーサーさんも影丸さんもやられちまうなんて、新魔術師とやらの力は本物らしい」
「ただの魔術師と何が違うのかな?」
「さぁな。ただ会場から出る時に見たが、あの時あいつが降らせた雨の威力、相当なもんだぜ。そこら中ボコボコ抉れてたからな。岩でも降ってきたのかって感じだよ」
晴登は倒れていたから知らないが、どうやらあの鉛のような雨は会場とその周辺のみに降っていたらしい。あれがこの山全体ならともかく、街中まで至らなくて本当に良かった。
「──あ、結月は?! 結月は大丈夫?! また熱出してる?!」
と、安堵したところで、この雨の被害を抑えてくれた存在を思い出す。雨男のことで頭がいっぱいで、彼女のことを忘れてしまっていた。
「落ち着けよ。そしてその予想は正しい。ま、病み上がりであれだけ力使ったらそりゃそうなるわな」
「やっぱりか……。後で謝らないと」
「そうだな、だいぶ無理させちまったみたいだし」
鬼化の反動から復活したばかりの彼女に再び鬼化を強要するという、文字通り鬼の所業をしてしまった晴登は特に罪悪感が強い。
しかし、彼女のおかげで最悪の事態だけは免れた。今回の防衛戦のMVPは間違いなく結月である。
「……なぁ、そのことに関して少し訊きたいんだが」
「何?」
「あの雨が降り始める直前、お前が結月に屋根を作るよう指示してたよな? 攻撃が来るってわかってたのか?」
ここで伸太郎に最もな疑問をぶつけられる。
スサノオとの戦いに必死で忘れていたが、言われてみればそんな幕開けだった。
だがこの答えはもう晴登にはわかっている。昨日までは空論だったが、今はもう確信した。
「……うん。その未来が"予知"できたから」
「!!」
晴登の言葉を聞いて、伸太郎は驚いた表情をする。そりゃ予知能力があるなんて言われて平常心でいられる訳が──
「昨日の話は本当だったってことか。不思議なことがあるもんだな」
「え、すんなり受け入れるんだね」
「魔術とかいう胡散臭いもん使ってるのに今更だ
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