第二部 1978年
ソ連の長い手
燃える極東 その1
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ソ連・ハバロフスク 19時
既に日の落ちたハバロフスク
市内某所にある臨時の赤軍指揮所
そこには国防省本部から脱出していた赤軍最高司令部の面々が密議を凝らしていた
上級大将の軍服を着た老人は、勢いよく机を叩く
「たかが一機に、何時まで手間取っているんだ」
一向に変化のないゼオライマーへの対応に苛立った国防大臣
男は声を荒げ、周囲の者を叱責する
「この上は、ヴォールク連隊を持って対応する。
一刻も早く、ゼオライマーを鹵獲しろ」
食指を、傍らに立つ赤軍参謀総長に向ける
「同志大臣、御一考を……」
彼は、大臣の面前に体を動かす
「我がソ連邦には、ブルジョワ諸国の様に精強部隊を遊ばせておく余裕はない……」
じろりと両目を動かし、参謀総長の顔を覘く
「君は、もっと物分かりの良い男だと思っていたのだがね……」
言外に参謀総長へ、揺さぶりをかける
「ハイヴ攻略は……、如何なさるおつもりですか」
椅子に踏ん反り返る国防大臣は、彼の方を睨めつけ乍ら応じる
「喧しいわ!黄色猿共が作った大型機とやらを捕れば、如何様にでも出来るであろう。
君の意見ではそうではなかったか……」
男の言葉に、参謀総長は苦渋の色を滲ませた
「ゼオライマーに関し、今まで君に一任してきたが何一つ成果が上がらなかったではないか。
本件は、これより私の采配で自由にさせてもらう」
再び右手を挙げて、食指を指し示す
「生死の如何は問わぬ。木原マサキを引っ立てて参れ!」
ゼオライマーの鹵獲命令が下った
参謀総長は挙手の礼で応じた後、遣り切れぬ思いを胸に抱きながらその場を後にした
ハバロフスク空港内にある空軍基地
会議室に集められた衛士達に、声が掛かる
「総員集合!」
整列する彼等に、強化装備姿の部隊長からの訓示がなされた
空襲警報が鳴り響き、遮音加工の施された室内まで聞こえる
「これより日本野郎の戦術機を鹵獲する。
市中への着弾被害は無視しても良いと政治委員から助言があった」
一人の衛士が、隊長に尋ねる
「隊長、鹵獲が困難な場合は……」
隊長は、苦笑交じりに答えた
「操縦席ごと打ち抜いてよいとの許可は既に下っている。
相手は一機だ、存分に暴れろ」
管制ユニットに乗り込もうとした時、胸にある十字架が風に揺れる
思わず手で掴み、考え込む
BETA戦を戦い抜いてきた手練れの兵士、その投入に疑問を覚える者はいなかったのか……
そう自問しながら、顎につけられた通信装置を起動し、網膜投射を作動させる
男は、視野を通じて脳に伝達される情報を確認する
駐機場より滑走路に機体を動かす
敵の武装は未だ不明……
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