第70話 アスベルン星系遭遇戦 その1
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るイゼルローンは同盟軍が急進する恐れのある以上、それだけの戦力を割くことは出来ない。考えうるのはアルレスハイム・パランティア・ヴァンフリートといった星系からの戦力抽出だ。しかしこれらすべてを動員したとしても五〇〇〇隻には恐らく達しない。となれば見せ金の下に分厚い印刷用紙を用意する必要がある。
ハリージャス二号が消息を絶った跳躍可能宙域は、パランティア星域へつながる。我々が敵艦隊への進路を維持するのであれば、右後背四時の方向。そこに五〇〇〇隻を超える艦隊を出現させれば、その正誤がはっきりしないうちは撤退を考えざるを得ない。
我々が司令部から与えられた任務はアスターテ星域の帝国戦力を、この星系かダゴン星域から離れた星系に釘付けにすること。イゼルローン攻略部隊は三個艦隊。既に偵察哨戒で二〇日近く稼いでいる。すぐにダゴンから巨大輸送艦を動かせたとしてもイゼルローン片道六日。補給と休養を入れてあと一〇日間は、ダゴンに帝国艦隊を送り込ませないような状況を構築しなければならない。
「ジュニアはもはや戦わずして撤退することは考えておらんのじゃな?」
「はい」
「質の悪いイカサマは力でねじ伏せるべきだ、と言うんじゃな?」
「足の遅いオバケを侮ってはいけませんが、必要以上に恐れる必要はありません」
「予備兵力は必要か?」
「アップルトン准将の第三四九独立機動部隊を推挙いたします」
「損害見込みは?」
「最大で一三〇〇隻と見込んでおります」
「それはさすがに儂を侮りすぎじゃぞ、若造めが」
座ったままの爺様の右拳が俺の脇腹を直撃する。別に爺様の用兵術を侮辱したつもりはなく、偵察哨戒において想定された五〇〇隻程度の交代部隊が存在した場合における損害計算だ。爺様の想定よりも敢えて過剰に言ったのは事実だが、短気で頑固な爺様に対して効果はバツグンだ。
「急戦速攻じゃ。お化けが背後霊になる前に叩き潰す」
爺様の力強い声が、戦艦エル=トレメンドの司令艦橋に轟く。モンシャルマン参謀長の纏う空気がより鋭敏になり、ファイフェルの顔に緊張感が走る。声を聴いたモンティージャ中佐とカステル中佐、それにニコルスキーがウィングから走り寄り、俺の後ろや左右に並ぶ。
「モンシャルマン。陣形はどうする」
「立方横隊。第三四九を一列下げ、左翼は第三五一、右翼を第四〇九とし、正面決戦といたしましょう」
モンシャルマン参謀長が歳に似合わず手早くキーボードを操作し、俺の映した航路図を消して模擬陣形を映し出す。爺様はそれと敵艦隊の情報が映っている画面を見比べて、数秒もせず頷いた。
「あえて横隊にするのは、敵の出方に合わせる為じゃな。良かろう。モンティージャは何かあるか?」
熟達した用兵家の自信と誇りに溢れた視線が横に動き、俺の右隣に立つ
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