第70話 アスベルン星系遭遇戦 その1
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かに質が異なる。むろん上等な方に。
「戦力差を認識し、必要十分な体制を整えておきながら、敢えて挑戦的な行動をとろうという意図じゃが……ジュニア、貴官はどう考える?」
爺様がこちらを見ずに手招きするので、俺は他の三人から離れて三段しかない階段を上り、ファイフェルの隣、正面を向く爺様の右隣に立って応えた。
「勝てる勝算があるというよりは、我々をこの星系から追い出せる算段があり、その一環として部隊を前進させている、と小官は考えます」
「追い出せる算段? 具体的にはなんじゃ?」
「一番考えうるのが数的優位です。ハリージャス二号の喪失方向から増援が来る、と考えるのが普通です」
「我々が二五〇〇隻と侮って接近し、砲戦距離に達した段階で増援が現れる。挟撃の危険性を考え、我々はエル=ファシルに撤退する。そう仕向けたい、と考えているということか?」
「さようです。参謀長」
「では我々はこの跳躍宙域に留まるべきかね?」
爺様を挟んで、モンシャルマン参謀長のいつになく鋭い眼差しが俺に向けられる。『そう仕向けたい』ということは、参謀長も送られてくる増援が『本物』かどうか疑っていることは明らかだ。だがこんなある意味では愚かな質問を俺に投げかけてくるということは、順序だてて爺様に決断を促すよう意見を提示しろと言うことだろう。モンシャルマン参謀長の親心に心の中で頭を下げて、俺は爺様に言った。
「アスターテ星域の帝国軍の最優先事項は、ダゴン星域におけるイゼルローン攻略部隊への妨害活動の継続です」
俺はファイフェルに頼んで、爺様の座る司令官席の前に付けられた小さなモニターに、アスターテ星域と周辺五星域の簡易的な航路図を映してもらった。
「我々にどれだけの兵力であろうとも、結果的にこのアスベルン星系内に戦うことなく留まっているだけであれば、彼らは別戦力によって妨害活動を継続することになります。今までと比べて過酷な勤務になるでしょうが」
こちらの戦力を正確に把握しているであろう防衛艦隊が、戦力不利でも接近してくるのはそこに『何らかの意図がある』とこちらに思わせるためだ。それは参謀長の言うように『別星系からの援軍の可能性』。
こちらが跳躍可能宙域で消極的に防備を固めているならば良し。積極策をとったとしても時間を稼ぎつつ、こちらの後背に戦力を展開して撤退に追い込みたい。だが時間を稼ぐにも一方的に敗北するような戦力差ではダメだと考えた。仮に一万隻の同盟軍がエル=ファシルに攻め込んでいたとして、アスターテに分派可能な戦力をその半数の五〇〇〇隻と見込んで、星域にある戦力の八割強、二五〇〇隻を防衛に集結させた。これはいわゆる見せ金だ。
防衛の為には最低でも残りの二五〇〇隻をどこからか調達しなければならないだろうが、大兵力のあ
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