第70話 アスベルン星系遭遇戦 その1
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ルン星系外縁部にその戦力を全面展開するに至った。
「居ますね」
「居るね」
「ほぼ全軍ですか」
「ふん。ご苦労なことだ」
俺とモンティージャ中佐とニコルスキー中尉とカステル中佐は、旗艦エル=トレメンドの司令艦橋の一角にある、先乗りしている偵察哨戒部隊から送られてきたデータが映し出されたモニターを見て呟いた。
作戦指示を受けてから二〇日以上。それより前から偵察哨戒は行われていたから、エル=ファシル星域かダゴン星域のどちらかからアスターテ星域を狙っているとは帝国側も理解していただろう。それでもダゴン星域側との接続星域ではなく、こちら側に戦力を集結させたのは賭けに勝ったというか、それとも偵察哨戒を逆手に取られたのか。
こっそり俺はモンティージャ中佐を見ると、中佐もこちらを見て肩を竦めている。あくまでもダゴン星系に対する妨害への牽制が目的だから、特に偵察哨戒部隊に対して隠密行動を徹底させてはいなかったということだろう。
「帝国艦隊、約二五〇〇隻が第一惑星軌道上に集結中」
「偵察中の巡航艦アカユカン四五号より、〇九二〇時待機通信。同部隊の移動を確認したと連絡あり。推定方向、当部隊現在宙域」
「第七跳躍ポイントを偵察中の巡航艦マタモロス一一号より、当該跳躍宙域に異常なし。帝国側通信衛星の所在を確認」
「巡航艦ハリージャス二号、生存信号ありません。撃沈したものと考えられます」
怒涛の如く流れ込んでくる情報に、オペレーター達も次々と反応して声を上げる。既に司令部要員はその内容を目で確認しているが、後日の航海日誌や戦闘詳報、軍法会議の資料としての音声データの為にオペレーター達は敢えて声に出している。委細もれなく報告するのが仕事だが、優れた情報分析科の士官に指揮されたオペレーターは事の重要度を的確に判断して順序良く報告してくれる。
「敢えてこちらに向かって移動してくるとは。であれば、なぜ跳躍宙域の周辺に偵察衛星や哨戒艦を撒いていなかったのでしょうか?」
一番の問題点。戦力的に不利な状況にあるはずの帝国艦隊が、敢えて優勢な我々に向かって移動を開始しているという情報。我々が把握していない、戦力差を覆すだけの戦略要素が、現在この星系の何処かに張り巡らされているのか。モンシャルマン参謀長は爺様に問いかけると、爺様は軽く右手で自分の顎を撫でて言った。
「儂らの出口が分かっていれば、哨戒艦一隻が指向性の高い重力波探知機を作動させていればいいだけじゃろう。博打と喧嘩の売り方が、なかなかに上手じゃな」
これは爺様にとって最高に近い褒め言葉だろう。準備よく星系に戦力を集結させ、戦力の無駄遣いをしない。戦力的劣勢側の防衛艦隊として間違いのない行動だ。この防衛艦隊の指揮官は、エル=ファシルを守っていた貴族連中とは明ら
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