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イベリス
第五十七話 梅雨だからその十五

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「悪く変わったんだ」
「あんな風になったんですね」
「巨人に行って変になって」
 そうしてというのだ。
「自称番長になって」
「入れ墨とか入れて」
「あんな変なファッションになってね」
「それで捕まったんですね」
「野球選手なのに格闘家のトレーニングもしたし」
 野球選手には野球選手のトレーニングがある、だが清原は何故かそちらのトレーニングをしたのだ。「それで強いとか言ってたし」
「それもないですよね」
「野球選手は強くなる必要はないよ」
「野球がどうかですよね」
「そう、格闘家のトレーニングなんてしたら」 
 それこそという口調での言葉だった。
「野球選手には野球選手の筋肉があって」
「格闘家には格闘家ですね」
「意味がないよ」
「格闘家の訓練をしても」
「この時点でおかしいよ」 
 清原はというのだ。
「周りも止めるどころか持て囃してね、番長とか言っても」
「持て囃したんですね」
「それでどんどんおかしくなってね」
「ああなったんですね」
「ああなったら終わりだよ」
 部長は苦い顔で言った。
「本当に西武の頃とは別人だよ」
「あの頃は爽やかだったんですね」
「そうなんだ、けれどその清原がいた頃でもね」
 西部の黄金時代でもというのだ。
「人気なかったね」
「そうだったんですね」
「けれど所沢はすぐに行けるしね」
 東京からというのだ。
「賑やかだし交通の便もいいから」
「困らないですね」
「全くね」
 そちらに転勤になってもというのだ。
「そんなことはないよ」
「東京と変わらないですね」
「そうだよ」
「やっぱりそうですね」
「雨も降るしね」
「東京で雨が降ってたら」
「もうすぐそこだから」
 埼玉特に所沢はというのだ。
「雨も同じだよ」
「そうですね」
「変わらないからね」
「それで、ですね」
「安心してね」
 そうしてというのだ。
「小山さんのお父さんも所沢で働けばいいよ」
「そうですよね」
「うん、何もね」
「心配いらないですね」
「そうだよ」
 咲に笑顔で言い咲も頷いた、そうして咲も頷いた。梅雨の時の部活でこうしたことを話したのだった。


第五十七話   完


                 2022・4・1
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