第五十七話 梅雨だからその十三
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「阪神が勝ってる試合をね」
「観てもらってですか」
「それで描いてもらおうかってね」
その様にというのだ。
「思う時もあるわ」
「ううん、阪神ですか」
咲はそう聞いて微妙な顔になって副部長に話した。
「毎年日本一になってますね」
「今はね」
「あんなに勝ってるのに描いてないんですね」
「あの人はね」
「そうですから」
だからだというのだ。
「ちょっと」
「あのチームの勝ってる試合はなのね」
「観ても意味ないんじゃないですか?」
こう言うのだった。
「それでもあの人描かない様な」
「じゃあ逆にね」
「阪神が負けてる試合観てもらうんですか」
「特に巨人に負けてる試合ね」
「年に一試合か二試合しかないですよね」
しかも常に十点差以上か完封で勝っている、誰もが巨人が負ける姿を観て喜んでいるのだ。まさに巨人には無様な負けがよく似合うである。
「そうした試合って」
「巨人は特に阪神に弱いからね」
「毎年百敗はしていて」
「その中でもね」
とりわけというのだ。
「阪神に弱くて」
「もう念入りに負けてますから」
「けれどたまに阪神負けてるから」
「そうした試合を観てもらうんですね」
「それで怒らせて」
そうしてというのだ。
「テンション上げてもらってね」
「描いてもらうんですか」
「巨人もたまには人様に役に立たないとね」
「悪いことばかりしてますからね」
「もう巨人のやることは全部悪いのよ」
それが巨人である、ここまで邪悪な存在はこの世にはない。人類が生み出してしまった邪悪の完成形と言うべきか。
「そうでしょ」
「はい、あんな悪い組織ってないですね」
「特撮の悪役並に悪いから」
巨人はというのだ。
「そんな連中に愛する阪神が負けたら」
「私も怒りますし」
咲は自分のことも話した。
「その時は」
「小山さんヤクルトファンだったわね」
「それでも怒りますから」
「巨人に負けたら腹立つしね」
「はい」
実際にというのだ。
「他のチームに負けてもこんな時もあるですが」
それでもというのだ。
「巨人に負けますと」
「腹立つわよね、私はパリーグで西武ファンだけれど」
「副部長さんはそうでしたね」
「お父さんが元々埼玉でね」
埼玉県民だったというのだ。
「別にその辺りの草食べてないけれど」
「それ埼玉の人よく言われますね」
「ある漫画からね」
「そう言われてるんですか」
「その漫画で埼玉はド田舎に描かれていてね」
かつて埼玉県に住んでいた人の作品である、兎角その作品では埼玉をネタにして描いていたのだ。
「凄いんだ」
「あっ、それ聞いたことあります」
ここで咲も思い出した。
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